同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

近況とか

今更ですがM3お疲れ様でした。
無料配布も含め購入枚数は87枚。今まで知らなかったサークルが自分にアンテナに入ってくることが多くて、「これ全部下さい!」攻撃を敢行したスペースが結構あって枚数が嵩んじゃいました。
今日までで30枚くらい開封したかな?ランスの新作やったり色々忙しくてペースが上がりませんが、気に入った作品も見つかって一息ついてるところです。
今のところdropnoteの『First Note』が一番好きかな。あとは定番だけどななひらさんの『らぶちゅ!』。ちょっとずつモチベも上がってきたからそのうち感想書きたいですね。最近は感想ブログもまた増えてきているみたいだし、流れに乗っていきたい。


それと、例大祭が明日に迫ってますね。会場には行けないし、ショップ委託に出るもので欲しいものといえば凋叶棕の新譜くらいなんですが、ちょっとしたお知らせがあるので書いときます。

い-01a 「文々。新聞音楽編集部」というサークルさんが凋叶棕考察本を出すんですが、それに私もちょこっと文章を書いてます。『辿/誘』の考察です。
例大祭で出すのは先行版みたいなので、あんまり告知もされてないし部数も少ないらしいんですが、『宴』以降の全作品の考察が載っておりページ数はなんと172ページ。編集段階でどうなったかは分かりませんが私も17ページ分くらい書きました。
凋叶棕の考察に興味がある方は手にとってみてはどうでしょう。完成版待ちでもいいと思いますけどね。先行版だけど値段1000円と結構高いし。


あと、凋叶棕といえば二次創作合同誌が出るみたいですね。あんまり同人誌や同人小説を読まないから良く知らないんですけど、メンバーはかなりのガチ勢揃いらしい。実際めっちゃ面白そう。

でもねー、この本についてはちょっと戸惑いもあるんですよ。私は自分より凋叶棕好きな人はそういないだろうって思ってたから、こんなガチな作品読んじゃったら自分の愛情が揺らいじゃうような気がして。
「こいつらには勝てない!」ってきっと思っちゃう。それが嫌なんですよ。読むのが怖い。自分の中にある凋叶棕を変えたくない。
買わないと後悔しそうだから買うには買うんですけど、しばらくは読む勇気が持てないと思います。
我ながらなんと卑屈な人間かと思うけど、私にとって凋叶棕はそれほどに特別なのだから仕方ない。
今でもなお『遙』は私の中で同人音楽のベストなんだ。簡単に処理していい感情じゃない。


以上、ちょっとした告知とどうでもいい自分語りによる近況でした。次はもうちょっと中身のある更新がしたいですね。
スポンサーサイト

2013年 同人音楽総括 その2 (5月~7月)

 1週間後に続きを書くといっておきながら平然と2週間かけるこの有様!モチベーションの低下はやはり深刻ですが、でも仕方ないんです。この前アリスブックスで買った『Indigo』って同人ノベルゲームがすんげー面白くて。一気に最後まで読んで1週間まるごと潰れちゃった。これだけガッツリ群像劇が描かれてるお話はそうそうお目にかかれないし、あちこちに衒学的なアレコレが仕込まれてるし、何より文章のリズムが好きなんですよねえ。このIndigo、2010年発売なんですがなんと今回の冬コミで無料配布するとのこと。30時間以上遊べる大ボリュームの作品なので冬コミ行く人はもらっといたほうがいいぞ!絶対損はしない!


31日西地区"の"01a 半端マニアソフト  同人音楽のシマにも近いから行きやすいよね!
半端マニアソフト『Indigo』


 そもそも今更になって何故3年前の同人ゲームをやってるかといえば、ちょうど今年の7月あたりに同じライターが書いてる『はるまで、くるる。』をやったからなんですよねー。この時期はノベルゲームばっかりやってて正直あんまり音楽を聴いてなかった気がします。Magical Charming!とか月あかりランチとかNOeSISとかSWANSONGとか素晴らしき日々とか、新旧問わず面白いゲームばかりでどれも印象深いんですが、はて音楽となると何を聴いていたんだっけ・・・?と考えてしまう。それでもまあよく思い出せば結構気に入ってるものはあったので、今回もバーッと書いていきますよー。メインは春M3と例大祭の作品ですね。春M3は会場に行っています。例大祭は1回も行ったことないのでいつか行きたいと思っているんですが、M3と時期が近いとなかなかどうも、ねえ?



 それじゃーまずは春M3の作品から。

tokimeki.jpg kotyou.png elements.jpg

 ななひらさんのときめき☆アンサンブル(左)は、おなじみのななひら枠だけど、その中でも印象深い部類。3曲目の「とっておきの魔法」が真っ直ぐで純粋で元気な青春ポップソングで、一時期は通勤時にヘビロテしまくってこの曲を糧にお仕事を乗り切っていたくらい大好きだ。歌詞がいいんだよな~。ななひらさんってたまにしか作詞はやらないけど、実はめっちゃセンスあると思うんだよね。やっぱり本人だけあって、あの声の生かし方を誰よりも知ってる。これ聴いた後から元ネタのゲームも始めたけど、しばらくの間はひまりちゃんの台詞がななひらボイスでいちいち脳内再生されて大変だった。「あんさんぶるガールズ!」がアニメ化した暁には、いっそのことCVななひらを大々的に起用してお茶の間を凍りつかせて欲しいね!

 i.i.c Realizationのan evanescent life(中)は、春M3の中では一番よく聴いた作品だった。創作活動と「胡蝶の夢」を絡めたアルバムコンセプトも面白いものがあるけど、単純に曲がどれも良かったな。アコースティックとデジタルが違和感なく融合してる。「Artificial Rose」って曲があるとおり、全編にわたり硝子の花のような繊細さと儚さが漂ってる。何よりメロディがどれもすんごい綺麗だ。特に気に入ってるのは「Reachable」のピアノ間奏のところ。跳ねるようなピアノの音が心の琴線をチクチク突いてきて、胸が痛くなるような儚いメロディだ。それから7曲目の「Twilight -Against Wind Mix-」。エレクトロニカっぽくまとめてきてると思いきや、いきなりエレキギターが唸り始めるこの曲はインパクトあったなあ。驚きがある作品は大好きだ。

 PurpleCapeのELEMENTS(右)はアニソン系のポップロック。あまり同意を得られないのだけど、自分はここのボーカルがめちゃくちゃ好きだ。そりゃあんまり上手くは無いと思うけどさ、一生懸命声張り上げてハイトーンとビブラートかけてる歌い方にぐっと来るんだよね。こういう歌い方でしか出せない儚さってのがあると思う。そしてこういうボーカルは同人音楽じゃないとなかなかお目にかかれない。これだから同人音楽はやめられねーんだよなー。しかもメロディが抜群に良いんだよ。このサークル、試聴するのさえこの時が初めてだったけど、このボーカルとメロディでズキューンと来てもう即堕ちですよ。スペースで「全部ください」やっちゃいましたよ、ええ。



 春M3からもういっちょ

atarasi.jpg bf.jpg alcana.png

 おんがくのじかんっ!のあたらしすぎるおんがく1(左)は、最近増殖中の幼女系シンガーを15人ほどかき集めて作られた業深きアルバム。M3のスペースでも異様な雰囲気を放っていた。購入したら5,6人の女性がアニメ声で「ありがとうございまーす!!」って一斉に言ってきてマジこわかった!でも作品は良かった!童謡を幼女仕様にした替え歌で、人数の多さを生かした輪唱なんかもあってなかなか面白い。特に「おとうさんといっしょ!」は、毎週のニチアサを生きがいにしている紳士のみなさんには是非聴いてもらいたい。死にたくなるゾ!

 EuchaetaのButterfly Effect(中)は、『展翅』の補完的な位置付けのミニアルバム。相変わらずの気持ち悪い展開と美しいメロディ、「ほのめかし」に満ちたコンセプトで私の溜飲を下げてくれる。「The Aquaregia lovers」みたいなロックチューンは彼の音楽では初の試みじゃないかと思うんだけど、これまた素晴らしい出来なんだよなあ。あのくっそドラマチックなギターソロ!この人のアルバムには必ずこういう「作中で一番盛り上がるポイント」が露骨に設置されてるから信頼できるんだ。

 Pipo worldのアルカナと魔女(右)は、なんとボイスドラマ。昨年秋あたりからボイドラも少しずつ聴くようになって、初めて出会った大当たり作品がこれだ。なんといってもゼシルシアちゃんが可愛い!それも父性を刺激するタイプの可愛さだ。主人公アルカナとの掛け合いがとにかく微笑ましくて、この2人の平和な日常を3時間くらい収録したファンディスクが欲しくなる。まあ本編では平和な日常はそんなに長く続かず、後半は国家の陰謀云々みたいな話になっていくんだが、それはそれで熱い展開もあって面白かった。最後も大団円で綺麗に締められ、前後編3時間飽きずに聴くことができた。ボイドラにも良いものはあるんだなあ。



 次は例大祭の作品!

monosugoi.jpg itazura.jpg neonkero.jpg

 Halozyの物凄いベスト(左)は、ついに出てしまった禁断のベスト盤だ。冗談抜きに物凄いシリーズは物凄い。この手の躁系電波ソングではこのシリーズが間違いなく一番狂ってると思う。イカれた歌詞と早口台詞と無駄にカッコイイアレンジで電波女王ななひらにいざ勝負!って感じのHalozyのガチっぷりが物凄い。普段オシャレなクラブサウンド作ってるくせに、この時ばかりはノリノリでギターソロ唸らせたりブラストビートみたいなの入れてきやがるからね。そしてそれに全力で応えるななひらさんのポテンシャルが物凄い。バーニングとコロシアムの小芝居なんかはボイドラ出身のななひらさんだからこそできることだよなー。特にコロシアムの、放火魔として霊夢に葬られたはずの魔理沙が復活してリングに立つシーンの謎の興奮について熱く語りたいけど余白が足りないので三倍アイスクリィィィィィム!!

 凋叶棕の(中)は、順当にコンセプトを深めてきたな、って作品だった。自由がテーマという本作だけど、タイトルの「徒」とは無駄なもの・無意味なものを指す。作中では、届かぬモノに手を伸ばし続け、やがて溺れていく者たちが描かれている。分かりやすいのが「二色蝶」と「一夜之夢」だよね。彼らの行為は「無駄なあがき」に他ならない。だけどそれって本当に無駄なものなの?というのが、本作の・・・というより、凋叶棕がずっと描き続けているテーマだと思う。「ロストドリーム・ジェネレーションズ」は、凋叶棕のボーカル曲の中でおそらく唯一、キャラクターが出てこない楽曲だ。だからこそ、凋叶棕の根底にもっとも近づいて覗くことができる。音楽面ではわりかし地味な作風に落ち着いてるけど、コンセプト面から凋叶棕を読み解こうとするなら絶対に欠かせない作品だ。

 KrasterⅡのNe;on×KEROchan(右)は、今年最大の衝撃作だった!Krasterという太陽のような作品を作り続けてきた大手サークルが、今になってまさかこんな陰気な作品を生み出すとはまったく思わなかったからだ。それも今までの「陽」の自己イメージを利用しつつ、「陰」の部分を浮き彫りにするような超テクニカルな仕上がりで、歌詞を読めば読むほど解釈が頭の中にポンポン浮かんでくる。詳細は個別記事に書いたから省くけど、間違いなく彼らは化けた!覚醒した!今後もゼッタイ面白い作品を生み出し続けてくれると思う。数年前のKrasterのイメージしか持ってない人は騙されたと思って聴いてみてほしい。そしてあなたたちもテッテッテテーの中毒になるがいい!




今回はここまで!続きはまた1週間後・・・と言いたいところだけど分かりません。とりあえずこれから数日は「その花びらにくちづけを」の新作をやるので忙しいんです。だから年跨ぐかもしれないけど、まあ後1回なのでなんとか最後までがんばります。

2013年 同人音楽総括 その1 (1月~4月)

 
 こんにちは、ひさしぶりの更新です。もはや廃墟となりつつあるブログですが、まだ見に来てくれている人はいるんでしょうか。ブログの寿命は約3年みたいな話をどこかで聞きましたが、なるほどこのブログは今年で4年目でした。CDを買った枚数自体はたぶん過去最高なんですけど、今年書いた個別の感想記事はわずかに2つというひどい有様。きっとこのままゆるやかに閉鎖していくんでしょう。モチベーションが復活する見込みはもうありません。でも、今はまだ少しだけやる気が残っているので、無理矢理搾ってでも、せめて一年の総括くらいはやっておきたいんです。

 というわけで、3記事ほどに分けて年明けまでに今年聴いた音楽作品の感想を時系列でバーッと書いていきます。もしかしたら途中でやる気が尽きて頓挫するかもしれませんが、まあその時はその時です。とりあえず今回は1月~4月くらいに聴いてた作品を挙げていきます。メインは通販で買った冬コミ作品。京都のボーパラ(+Mコミ)でも何枚か買いました。大阪のコミックトレジャーなんてのもありましたが、何も買わずにひたすら知人と喋っただけでしたね。


 この時期オリジナルでよく聴いていたのは↓の3枚。

halcy.jpg kemolove.jpg minirobo.jpg

 クレバスランプのHalcyon(左)は、白髪プロジェクトとかいう有名っぽい絵師と組んで長々とやってる作品群のひとつで、それまでの作品は全然興味が湧かなかったんだけどこれは良かった。1枚で話が完結してるし、ボイドラパートと音楽パートの配分が絶妙。ドラマパートで情景や心情を語りすぎず、大事な部分はしっかりと音楽に託されていてあくまで「音楽作品」をやっていた。3曲目と4曲目は特にそのへんのバランスがとれててよく出来てるんだけど、好きなのは2曲目の「ソライロパレット」である。ロリボーカルと哀愁メロディが合わさると何か謎のノスタルジーが湧いてきて涙腺が緩むんだよね。あれどういうメカニズムなんだろう。

 ななひらさんのKEMOLOVE(中)は、まあ説明不要というか溺愛枠なので・・・。今年はななひらさんが関わる作品が多かったけど、やはりconfettoで出してる本家はキレが違うよね。ミニアルバムだけどどれも非常にいい感じの電波ポップに仕上がっていて隙がない。特にかめりあさん作曲の「Jump Over!生物種」は聴いててめっちゃ楽しくて大好きだ。かめりあさん個人名義の曲はあんま好みじゃないけど、ななひらさんと組む曲はどれもかわいさとかっこよさが同居してて化学反応を感じる。じゃんじゃんじゃん!じゃんぷおーばー!のところとかライブで盛り上がりそうだよなあ。通勤中に聴きながら心の中で拳を振り上げております。

 MiliRobo.betaのミニロボベータ(右)は、なんというか異質な作品だった。狭い箱の中に色んな音やら何やらをぐちゃぐちゃに詰め込んでスクラップにして放射線を浴びせたような感じ。何言ってるかわかんねーと思うがとにかく聴いてて精神力を削られる。しかし楽しい!こういうのを電波ソングって言うんだろうな。ロリっぽい声の人に「きゅんきゅん!」とか「ハイ!ハイ!」とか言わせとけばそれっぽくなる今時のテンプレ電波ソングに冷却水ぶっかける音楽だ。つまりロックだな。電波ロック!新しい!
「そっかー、友達って魔法で作るものなんだね!なるほど!」 
 う○ねこのなく頃にですね、分かります!



tadori.jpg

 この時期東方アレンジで聴いてたのは凋叶棕の辿/誘だけだった。ヤバイ作り込みだった『騙』からたった4ヶ月で2枚組のフルアルバム突っ込んでくるもんだから質が落ちてないか心配だったけど、まったくの杞憂だったね。騙や遙みたいに、すみずみまで全部好き!ってわけではないけど、「name for the love」と「she's purity」にはハマった。この2曲はどちらも「名付け」をテーマにしているけど、描かれる物語はまったくの対極だ。愛の有無。曲順がえげつないんだよね。愛をもって「名付け」を全肯定してみせる「name for the love」のあとに、名付け親たちを「この嘘吐きたちめ!!」と糾弾する「she's purity」を持ってきやがる。そしてこの「嘘吐き」というのはもしかして前作の『騙』にもかかってくるんじゃ・・・?とか考え出すとどんどん深みにはまる。これが凋叶棕なんだよねー。安易な線引きは許さない。



dp.jpg aono.jpg

 こちらはボカロ。Dot Princess(左)は、久しぶりに買った趣味工房にんじんわいんの作品で、京都のボーパラで買ったものだ。ぶっちゃけ買うものがあまり無かったから間に合わせで手に取った作品なんだけど、これが思ったよりよかった。無調教に近い素朴なミクの声で、作者の大好きなレトロゲームのことを歌わせる。こういうのなんか黎明期のボカロを思い出すんだよねえ。特に「ねずみと猫の鬼ごっこ」はあらゆる要素がノスタルジーに満ちていてウワーってなる。チップチューンと思い出補正のタッグはだめだ。郷愁に殺されてしまう。

 millstonesの青の研究(右)は、この時期に出た中では一番期待していた作品で、期待どおりにすばらしかった。ラストの「青の研究」で「青の序論」の続きが描かれるところ、ゾワワワーってくるよね。青にまつわる個々のエピソードを学んだ末に、「青の研究」が完成した!って感じでさ。前作もそうだったけど、アルバムの中で世界を広げるのがうまいよなあ。前半はテクノ系の音でグイグイ進行させて、途中から民族系の音が絡まって、ぶわーっと世界が広がる。他の人には真似できないコンセプトアルバムを作れる人だと思う。今年メジャーアルバムを出してたけど、ああいうのではこの人の魅力は計れないんじゃないかな。今後も同人でこういうのを出して欲しいですねー。



thanksyou.jpg tensi.png pandora.jpg

 こちらの3枚は旧譜。この時期に中古屋で買ったり知人に貸してもらったりしたもの。

 daiさんのThanks/you(左)は中古屋で買ったもの。なんと2005年発売。たしかひぐらしを知ったのが罪滅し編が出たあたりだから、丁度それと同じ時期に出たものだ。ゲームに収録されてない曲がすげー良くてびっくりした。アルバム中盤からの「月影」と「夢想」、こっからアルバムの雰囲気ががらっと変わるのが好きなんだ。これはひぐらしのサウンドトラックでもあり、同時にdaiさんの個人アルバムなのだなと思わせてくれる。日記文めいたライナーノーツにも妙な執念がこもっていて、当時の07th expantionにはそれだけの熱量があったんだなあとしみじみ思った。

 Euchaetaの展翅(中)は、昨年の春M3に行かなかったため入手できなかったことを悔やんでいると、見かねた知人が貸してくれた。これはまあ個別記事をがんばって書いたのであんまりもう書くことない。Euchaetaについて一言で説明すると「しっくりくる」なんだよね。メロディといい展開といいテーマといい、「この作者ひょっとして俺のために音楽作ってくれてるんじゃない???」と思っちゃうくらいにしっくりくるんだ。ただEuchaetaすげえすげえって人に会うたびに言ってるけど、同意されたためしがない。もうやだこの界隈。

 無法地帯のPandora(右)も、展翅といっしょに貸してもらったものだ。通販で出てないから持ってない人も多いかもしれないが、これは凄いよ。ここ2年の物語音楽の中ではダントツで好きな作品だ。終始スローに展開するのにめちゃくちゃドラマティックなんだよね。メロディが超キャッチーだし、荘厳なコーラスや男女ツインボーカルが入ったり盛り上がるところはしっかり盛り上がるし。何より素晴らしいのがラストに出てくる神様だ。希望を抱いて箱庭を脱出する男女をナイフでザクーッて刺してヒャハハハハと高笑い。デッドエンド!このときのブチギレ演技がキレッキレですげえのよ。この美しき幻想箱庭奇譚の幕切れをナイフという、ひどく俗物的なもので済ますのがシビれる。
「何より、手が汚れるしね」
 キャー!神様かっこいい!!!


 さて、今回はここまで!次は春M3と例大祭かな、1週間後くらいに続き上げます。

[感想] Ne;on×KEROchan☆ / KrasterII

Ne;on×KEROchan☆
(2013/05)
KrasterⅡ

公式サイト


東風谷早苗ちゃんの二次創作というと個人的には現実世界で異端扱いされて両親やら
同級生やらから迫害された過去みたいなのを描く暗~い話が好きでして、この作品も
その系列に入ります。過去話というよりはパラレルワールドで、神奈子諏訪子と出会わず
現実世界にずっと留まり続ける早苗が幻想郷ではっちゃけてる早苗の姿を夢見て
羨望と嫉妬にうち震える、みたいな話。早苗のこういう話自体はそう珍しいもんではないと
思うんですけど、同人音楽で、しかもアルバム一つまるごと使ってストーリー仕立てに
してあるのは初めて見ます。しかもこれ、Krasterの作品ですからね。
KrasterですよKraster。あの、聴いててウキウキしてくるようなあのきらびやかな曲調と
Ne;onさんの太陽のような歌声で早苗ちゃんの卑屈な感情がぶちまけられるのです。
この倒錯っぷりはハンパじゃない。今までKrasterが描いてきた「光」の背後に潜んでいた
「陰」がここへきて反旗を翻してきた感じ。『とある従者への追憶』あたりからそういう
コンセプトアルバムっぽいのを作ってる兆候はありましたが、ここまで思いきって
舵を切ってくるとは思いもよらなかった。こっそり名義が「KrasterII」に変わってるけど、
確かに彼らは変わったと思います。Aliesonと同じです。さあ境界線を踏み越えよう!


01-夢世界のドッペル
KrasterIIの門出となる1曲目、もうイントロのピアノからして素晴らしいですよね。
そっと優しく背中を押すような、か細くも力強いピアノポップな曲調とNe;onさんの歌声の
相性は抜群で、まさにKraster!って感じなのに歌詞だけが超後ろ向き。幻想に憧れ、羨望し、
嫉妬する早苗ちゃんの溢れんばかりの逃避衝動が何とも軽やかに歌われているわけです。
この曲調自体が早苗ちゃんを責めたてる「光」になっているように思えるんですよね。
「孤独って怪物が 餌を欲しがって 私を放すまいと拘束する」って歌詞にもあるように、
Krasterが照らす光はきっと彼女には眩しすぎるんでしょう。


02-飽くる朝のトートロジー
アンニュイな雰囲気のピアノバラードと思いきやサビでは振っ切れたような明るい曲調に。
ここのサビがすんごいKrasterっぽくていいメロディなんですよねー。いい曲なんですよ。
でもねえ、描かれてる内容はろくなもんじゃない。トリップしてるからね。トリップ。
旅立とう、って行ってますけどアナタどこの世界に旅立つ気ですか、と。
この曲単体だとポジティブにも捉えられますけど最後まで聴いたらもうだめですね。
「真っ暗な狭い部屋の中 誰もいない部屋の中」とかすんげー嫌らしい伏線だ。


03-諦観エゴイズム
デッデッデデー!(絶望)
異様に耳に残るイントロのシンセリフと珍しく吐き捨てるようにパンキッシュに歌うNe;onさん!
紛れも無く今作のキラーチューンであり新生Krasterを象徴する1曲であること間違いなし。
なんつーかこの曲はほんと今の自分にしっくり来ますね。猛烈な勢いで並べ立てられる
「諦め」の文句にいちいち共感できてしまう。自分の気持ちを代弁してくれてるみたいで
聴いててめちゃめちゃ爽快感あるし何度でも聴き返してしまいます。
世界を呪いまくった挙句、一番屑なのは自分自身ですよねーという卑屈な自覚が気持ちいい。
今年の同人音楽で一番聴いてる曲ですね。こういう曲を待ってた。ほんと大好き。

物語としての位置付けはたぶん早苗の内心の吐露ってとこでしょう。
冒頭で「現実世界で異端扱いされる早苗が好き」みたいなこと書きましたけど、
今作に関しては早苗はただの凡人で自身が凡人であることを自覚してしまった人の末路って
印象があります。たぶん自分がこの歌に共感してしまったからだと思いますが、
だからこそ早苗ちゃんに愛着湧いてきたし作品にも愛着が湧くというものです。

「分かってるわ もう諦めてるから だからそんなに五月蝿くしないでよ
 分かってるわ 諦めるしかないって だから邪魔するなって言ってるでしょう」
ここの歌詞ほんっっと良いよなあ。Ne;onさんの歌い方も最高。


04-トモシビ
激しい曲調から一転、穏やかなピアノバラードに。わりかし地味な曲ですがメロディが良いし、
何よりストーリーの解釈上では一番重要な曲だったりします。この曲は分岐点なんですよね。
早苗が神奈子諏訪子と出会ったか、出会わなかったか。
「飽くる朝のトートロジー」では「真っ暗な狭い部屋の中 誰もいない部屋の中」でしたが、
「トモシビ」では「真っ暗な狭い部屋の中に 貴方の光が灯るの」となり、ここで世界が
分岐しているわけです。で、この分岐をどういうシチュエーションと捉えるかが今作の
一番面白い考察ポイントです。自分は次のAかBどっちかかなーと考えてます。

解釈A:パラレルワールド
エロゲの選択肢みたいな感じで、「トートロジー」→「エゴイズム」の分岐とは
完全に独立した分岐世界と捉える考え方。「トモシビ」で神様たちと出会った早苗は
幻想郷で幸福な日常を送りました。メデタシメデタシ。
これだと「トモシビ」の早苗は綺麗にハッピーエンドを迎えます。でも、「エゴイズム」までの
早苗は完全にほったらかしです。鏡の中の幸福を与えられるだけです。

解釈B:早苗の妄想
「トモシビ」は「エゴイズム」までの早苗が生み出した妄想である、という考え方。
つまりトモシビ以降の幸せな早苗ちゃんは全て脳内お花畑でしたーということであり、
A以上にどうしようもない解釈ですが、これはこれで早苗ちゃんは救われているとも言えます。
当人が幸せならば、たとえそれがただの逃避であっても救済たりえるのですよ。
個人的にはAよりもこちらの解釈の方が好きだし、「諦観エゴイズム」のラスト
「私は何のため 生まれてきたの 答えてみなさい そうじゃなきゃこのまま
 利己主義な偶像に 魅入られ蝕まれていく」
こことも綺麗に繋がるんですよね。「トモシビ」で描かれる出会いが実は
「偶像に魅入られ蝕まれていく」早苗の姿だった、と。

とまあ、こんな感じでどちらにしろ早苗にはまともなハッピーエンドは与えられません。
だけど自分はBのほうが好きなので、今後の曲はBの解釈に沿って捉えることにします。


05-Q.E.D.
Q.E.D.とは言わずと知れた証明終了ですが、早苗ちゃんは何を証明しているのか。
上のような解釈でいくなら答えは簡単。神の存在証明です。
神様は幻じゃありません!神様はここにいます!いるんです!
妄想に耽溺することで自分を正当化する早苗ちゃん、実に幸せそうですね。
曲のほうも実にKrasterらしいウキウキポップで幸せを全面援護!

『明日の朝までに 期待を込めてこう言うんだ 「ただいま、そして、おかえりなさい」』
この台詞カギカッコがひとつしかないよ早苗ちゃん!


06-ハイギミックデイズ
これも真正面からKrasterって感じのすんげーいい曲ですよね。
この曲だけは諏訪子視点で書かれているようですが、たぶんその諏訪子は早苗がつくった
幻なのでやっぱり早苗視点の一種なのかもしれません。「もしも世界が幻だったら」とか
「もしも私が幻だったら」とか自覚しながらも明るく前向きに進もうとするさまが描かれますが、
そもそも前向きってどっち向きなんでしょうね。彼女にとってはどれが現実なんでしょうね。


07-It's MO★RI★YA WORLD
フィナーレを飾るのは電波曲でした。Krasterの作品全部持ってるわけじゃないからあれだけど
こういう曲って実は初なのでは?守矢一家の騒がしくも温かな日常が描かれていますが
歌詞のところどころに後ろ暗いものが見え隠れしているし、うりゃおいうりゃおいの掛け声が
空元気にしか見えないのがすごい。
「ステージの裏側の 本当の動機なんて
 考えるだけ無駄じゃない? そんなの誰にも分からない」

いやー、耳が痛いですね。めっちゃ裏側暴こうとしててスイマセンスイマセン。
でもこれはホントそのとおりで、自分はこういう「当人だけのハッピーエンド」ってのが
大好きなんですよね。たとえその先に空虚しかなくても、物語はこれで終わりなんですから。
好きな場所で終わらせられるのがフィクションの特権ですよ。


◆まとめ
まあこんな感じで、久しぶりにどっぷりハマれた東方アレンジ作品でした。
今作の公式のテーマは「守矢一家の光と陰」なんですが、この「光と陰」の描き方には
ちょっと驚かされましたね。これは「光」これは「陰」って分割して描くんじゃなくて、
「光と陰」が裏表隣り合わせに描かれている。光あるところに陰あり、というか。
特に後半の「Q.E.D.」と「ハイギミックデイズ」が顕著で、この3曲は曲調としては
今までのKrasterやNe;onさんのイメージそのまんまって感じの明るい曲なんですが、
前半の3曲で描かれた内容を照らしてみるとそこに「陰」が浮かび上がるわけです。
ちょうどアルバムの中心で境界線のように現実と幻想を区分する「トモシビ」といい、
この作品には優れた音楽アルバム特有の構造美みたいなものがあるんですよね。
正直言ってKrasterがこんなもん作ってくるとはまったく考えてなくて、
最初は「諦観エゴイズムかっけー」としか思ってなかったんですけど、よーく歌詞を
読んでいくとウオオオってなったので凋叶棕とか回路とかああいうのが好きな
めんどくさい皆さんは是非じっくり聴いてみてください。

つーわけでまずは諦観エゴイズム聴いて「かっけー」って思うところから始めよう!
デッデッデデー!



※ところでこの公式PV初めて見たんですけど、えらく神奈子にフォーカス当たってますね。
この曲が早苗の内心って解釈を変える気はないですが、その心を神奈子が代弁している、
って解釈はアリかなー。作中に描かれている早苗ってこんな感じに感情をぶちまけることが
できるタイプではないから、神奈子という存在を生み出して彼女に世界を「呪わせた」とかね。
そうすると「諦観エゴイズム」には神奈子自身のそういう悲哀も含まれているんじゃないか・・・
とかまだまだ妄想を膨らませる余地はありそうです。誰か綺麗にまとめてください><

[感想] 展翅 / Euchaeta

展翅
(2012/05)
Euchaeta


Euchaetaは2年くらい前から個人的に注目していて、当時からメロディ良し音作り良し
コンセプト良しでドストライクの作風だったし、その後も自分好みの音楽を
作り続けてくれている数少ないサークルです。特に3作目の『Alice』は、自分が同人音楽を
聴く上でずーっと考え続けていたこと…「音楽で物語を表現するとはどういう事か?」
という疑問がひとつのテーマになっていて、私の中では好きとか嫌いとかを超えた
特別な作品に位置づけられています。
だからホントに語りたいのは『Alice』なんだけど、そのためにはまず2作目の『展翅』を
整理しておかなくちゃならない。何故なら『Alice』は『展翅』の応用だと考えているし、
何より現行作品の中では『展翅』がもっとも「Euchaetaっぽい」からです。
そもそもEuchaetaというサークル自体がおそらくあまり知られてないと思うので、
まずは『展翅』をベースにEuchaetaとは何ぞや?というところから始めます。

……まあ何というか、これほどの作品を出していればそのうち勝手に人気出るだろうと
思って静観していたんですがねえ、情報サイトもレビューサイトもちぃーーーーーーっとも
取り上げてくれないし、流石にちょっとイライラしてきたのでもう私が一から十まで
徹底的に語ってやろうと思ったんですよ。お前らがやらんのなら私がやってやる!


◆夢見の音楽

Euchaetaがどういう音楽か、というのは自分の語彙力では表現しづらいんだけど、
いちおう作者の言によればプログレッシブエレクトロニカらしく、確かに変拍子とか
転調が多いのでプログレ要素はあるんでしょう。ただエレクトロニカってのは
ちょっと微妙なところで、実際はクラシックっぽいピアノとか管弦楽をベースにしつつ
民族・民謡チックなフレーズを入れたりギターロックをやってみたりとかなり多彩。
もちろんエレクトロ要素の強い曲も多いけどそれだけではないってことですね。
基本はインストだけど所々ボーカル曲もあり、作者本人が歌ってたり女性ボーカルを
起用したりボカロ使ったりとこちらも様々。そもそも一言で言い表すには無理がある。

で、こう書くと散漫な印象になると思うけど実際はそれほどでもなく、メロディと
音作りが一貫しているから統一感はある。慣れると数秒聴いて「あ、Euchaetaの音だな」
と判別できる程度にはしっかり作ってある。特に民謡が耽美化したような独特のメロディは
耳に残ります。東方のメロディが好きな人は比較的好みに合うんじゃないかな。
音作りに関しては低音がかなり強調されていて、ぐわんぐわんと唸るベース音が
聴く者をEuchaetaの世界に引きずり込む。そんでまたこの低音が奏でるメロディがまた
やたら綺麗で歌心があったりして、ピアノや笛などの主旋律とあわせてメロディの層が
できるんだ。この重層感が彼の音楽のキモ、幻想を生み出す源泉です。

さて、ここまでEuchaetaの音楽をつたない語彙で説明してきましたが、結局のところ
大事なのは「どういう音楽か」ではなく、「この音楽を聴いて何が想像されるか」です。
そこにどんな幻想が宿るのか……私はね、この音楽は「夢見の音楽」だと思うんです。
「夢を見ている感覚」を音楽にしたもの。
夢ってのはだいたい目覚めてから思い出すと場面の繋がりとか会話や行動が滅茶苦茶で
何だこれって思うんですけど、夢を見ている間はそんなこともなく支離滅裂な物語を
ふーんって感じで受け入れちゃうじゃないですか。この音楽から想像されるのは、
そういう感覚なんですよ。曲と曲、作品と作品はどこがどう繋がっているのか、
それとも全く繋がっていないのか。よくわからないけど、何となくひとまとまりのもの
として受け入れてしまう。彼の音楽全体がそういうふわふわした曖昧なものに
包まれていて、それに浸るのがたまらなく気持ちいい。夢見の音楽。

そして2作目『展翅』はそういった「夢見の音楽」の雰囲気がもっとも色濃く出ている
作品です。各曲はそれぞれ色合いが異なっていて、しかしどこかで繋がっているような
気もする。そんな感覚を与えてくれる曲たちを、まずは1曲ずつ見ていきましょう。
ちなみに初回版とリマスター版がありますが、主に初回版について言及してます。
そっちのほうが好みなので。


01-綺譚
ゆったりとしたピアノが変拍子を纏いながら不穏なメロディを奏でていくイントロトラック。
ピアノは基本的に同じメロディの繰り返しだが、奥のほうでチャカポコカラコロと
変な音がずっと鳴り響いてたり、テレビの砂嵐めいたノイズやらが左右に動き回ったり、
途中からボーカロイドのコーラスが入ってきたりして不穏さに拍車がかかる。
終盤になるとピアノのメロディ自体も沈むように少しずつ変化していく。
ちなみに綺譚とは「美しい物語」という意味らしい。この曲が美しいというのは
少し違和感があるかもしれないけど、実がそれがちょっとした伏線だったりするので
気に留めておくといいかもしれません。


02-流彩色 / Last and Remember
1曲目とはうってかわってギターとピアノが絡み合う疾走感のあるボーカル曲。
1曲目がものすごく中途半端なところで途切れて突然この曲が始まるんだけど、
この不連続っぷりがとても「らしい」なと思う。夢見の感覚。
曲については、歌メロは非常にキャッチーだが作者自身によるボーカル(男)は
好みが大きく分かれるところ。お世辞にも上手いとは言えないし声質もイケてない
オーラに満ちてる。自分もちょっとこれは・・・と思ってたんだけど、リマスター版で
ボカロになってるのを聴いてやっぱりこっちのほうが良いなと思ってしまった。
どうやら中毒になってしまったようです。うん、まあ味はあると思うよ。
ただやっぱりEuchaetaはボーカルパートよりもインストパートのほうが聴き所で、
この曲も冒頭からピアノが花吹雪のように踊りまわっていてやたら華やかだし、
何よりベースなど低音部がうねうね動き回っているのがたまらない。特に2分過ぎ、
「幸せな物語」で歌が途切れ、一瞬の静寂の後ベースソロのパートに移行するところは
Euchaetaの真骨頂。層状を為す音の群れから低音だけを抜き出したときの、この侘しさは
彼の音楽でなくては味わえない。少なくとも自分は他に知りません。


03-風立つ沢の咲花 / Act As Bloom
これもボーカル曲で、イントロのワイルドアームズみたいな笛のメロディが印象的。
金比羅船々みたいなアップテンポな民謡調の楽曲に仕上がっており、いわゆる同人音楽の
「民族系」とは少しタイプが違う。とはいえこの作品の中では一番ストレートで聴き易い
曲調で、ボーカルは相変わらずアレだが私も大好きな曲です。ラストサビからアウトロの
畳み掛けるような展開に胸が躍るね。
流彩色とあわせてボーカル曲はこの2つだけで、いずれも喪失したものに想いを
馳せている情景が浮かびます。ただ流彩色は「色」、この曲は「花」を媒介にしている。
同じテーマを扱う上でこういう差異を持たせるのは面白いところ。


04-砕ケ星
アップテンポなボーカル曲が続いたところでピアノ中心の落ち着いたインスト曲。
作中では一番儚くて好きなメロディです。ピアノの主旋律と低音部の副旋律が
美しく絡み合いながら、中盤から笛・鉄琴・弦楽器なども交わり、終盤でぶわーっと
盛り上がる。中盤から終盤に差し掛かるところ(1分56秒あたり)でここでも一瞬の
静寂を挟むのがほんと素晴らしい。基本的に音を雑多に敷き詰めるタイプの音楽なのに、
ときおり絶妙なタイミングで隙間を挟んでくるのが憎らしい。音楽なんて作ったことない
私が才能に嫉妬してしまうレベル。この曲試聴で公開されてるけどお前らこれ聴いて
何も感じないわけ?マジで言ってんの?って思ってしまうけど、まあ人それぞれ
なんでしょうね。繰り返しますが私はこの曲ほんと素晴らしいと思います。


05-春は君の為に散る / Forever in a While
お次はノイズである。イントロのノイズのあと、かすれた笛のような音が主旋律を担うが、
ノイズめいた電子音がバックで鳴り続ける。この電子音ノイズのリフ(?)がやたら
メロディアスで妙に耳に残るのが面白い。2分30秒あたりからノイズが晴れてサビに突入し、
壮大な展開を見せるもすぐに収まり再びノイズリフが入ってくる。わりと地味な曲だけど、
当たり前のようにメロディは良いし曲名の意味とか色々考えていくと楽しめる曲でもある。


06-欠片の聴客 / Public Pieces
今度はチップチューン系の音が中心になる。この曲はメロディの展開が少なく、
同じメロディを繰り返しながら少しずつアレンジが変化していくタイプ。
弦楽器やオルガン、ドラムンベースなどの音がメロディを彩っていく、ある意味
非常にEuchaetaらしい曲で、1stアルバムにもアレンジ違いで同じ曲が収録されている。
とはいえこの曲も地味で、しかも1stでも聴いた曲なのでこの辺は多少だれるかな。


07-瀟洒にして静謐なる悠久を貴女に
ほとんどピアノと弦楽器のみで構成されるクラシック系の楽曲。タイトルどおりの
気品のある雰囲気が心地良い。構成はシンプルながらメロディがやはり重層的で、
ピアノと弦の高音低音あわせて様々な旋律が折り重なっておりとても美しい。
特に中盤から入ってくるウッドベースの音が心地良い。最後は打楽器も入ってくる。
彼の音楽全体に言える事だけど、曲の進行に従ってどんどん音数を増やすことで
ドラマティックに仕立てるやり方は面白い。さながら音のパレードのようです。


08-哀悼
来ましたよ哀悼!5~7曲目の地味曲でだれてきた聴者の度肝を抜く今回の最高傑作!
嫌がらせのような轟音ノイズから始まり桜吹雪のようなピアノが舞い始め、航空機の
エンジン音のような気色悪い低音が耳を蹂躙して1分30秒、ストレスをぎりぎりまで
かけたところで爆発音めいたブレイクが入る!こっから本番!!
ストリングスが怒号のようなメロディを掻き鳴らし、ウゥゥゥゥ~↑とサイレンが
クレッシェンドで暴れ回り、打楽器がけたたましく鳴り響きさらにストレスをかける!
そして2分6秒、こっからが本番の本番!!!
ノイズを突き抜けるようにEuchaeta特有の美しいピアノメロが流れ込んでくる!
ここからの30秒はマジで至福の瞬間!ノイズに負けない雷雨の中に咲く花のような
ピアノメロの儚さ美しさときたらもうね……自分の求めていた音楽のカタチがここにある!

……がんばってこの感動を表現しようとしたけど無理ですね。でもね、それまでの
ゆったりとした曲の連打からいきなりコレは心底驚かされたしめちゃくちゃカッコイイ。
この作品にはクロスフェードデモが無いんだけど、無いのも仕方ないですよ、これは。
事前情報があってはこの衝撃は得られまい。だからここに書くのもためらったけど
まあ知らん。どうせ文字で書いても伝わらんでしょう。ともかく「作者頭おかしい」
と思った楽曲に出逢うのは久しぶりでしたね。こういう曲に出逢うために私は音楽を
聴いているんですよ。イメージとしては…何でしょうね。ラピュタで竜の巣に突っ込む
シーンがあるけど、ああいうクライマックス感が思い浮かびます。これに「哀悼」って
名前つけるセンスがイカレてるよね。静謐な祈りの中に渦巻く激情って感じ。
副題が塗りつぶされて読めなくされてるのもそそるギミック。誰が、どういう状況で
かような「哀悼」を示しているのか、想像は膨らむばかり。


09-The Aquaregia Loves / In the Butterfly Effect
哀悼の超展開から一転、突然ピアノソロの落ち着いた曲に変わる。
この曲はデモ版みたいな感じで45秒しかなく、完成版は最新作の『Butterfly Effect』に
収録されている。もともとは『展翅』に完成版を収録する予定だったみたいだけど、
しかしこれはこれでジェットコースター感みたいなのがあっていいと思う。


10-展翅
これまた変な曲で、弦楽器が跳ねるようなメロディを奏で、そっからオーケストラが
入ってきて大団円みたいな謎の雰囲気を醸し出す。哀悼からここまでが超展開すぎて
何がなにやら全然分からないけど自分はここの流れが作中で一番好きだったり。
そう、これがEuchaetaの音楽だ。不連続なものが強引に繋げられてる感じ。これがいい。


11-鈴祭の雨
最後を飾るのはやけに陽気な曲で、雨降りのSEの中、笛と太鼓がお祭りのような音楽を
奏でるといったもの。最後がこれでいいのか、という気はするのだが、いや、最後が
これだからこそいいのだ、という気もする。あまり意味は分からないけど、こういう
謎の説得力がEuchaetaなのである。夢見の音楽。寝覚めはいいほうが良いに決まっている。




はい。
自分にしては珍しく『展翅』を全曲音楽っぽい切り口で書いてみました。
この作品はやっぱり曲が好きなんですよね。「これを待っていた!」って感じのものが
いくつもある。だからコンセプトとか物語とか云々の前に自分にとってものすごく
「しっくりくる」音楽なんです。
そして「しっくりくる」からこそもっと考えたくなる。作品を深く理解したくなる。
だからここからは今度はコンセプトとか物語のほうから少し考えてみましょう。


◆夢想の標本

まずこの作品は、おそらく「アルバムを通して一本に繋がる物語」ではないと思います。
どちらかといえば、個々の独立した物語がキメラ的に無理矢理くっつけられている。
夢見の音楽。『展翅』というタイトルから、人々の夢想が標本のように繋ぎ止められ、
展示物として並んでいるイメージですね。ただし、それらは雑多に並んでいるわけではなく、
展示物には一貫したテーマが与えられています。
桜です。

「桜の樹の下に逢いに往こう」
これは特設サイトにも帯にも使われている、「The Aquaregia Lovers」の一節です。
桜の樹の下にあるのは何か、といえばそれは死体と相場が決まっていますよね。
梶井基次郎然り、東方妖々夢然り。フィクションではよくあることです。
そして当然、「桜の樹の下に死体が埋まっている」という話は空想の産物に過ぎません。
そこで「桜の樹の下に逢いに往く」を、「桜を見て人々が抱く空想に逢いに行く」と
置き換えてみるのです。咲き誇る桜を、あるいは散りゆく桜を見て人々は何を想うのか。
何を夢見るのか。それを標本のように美しく音楽で飾って、繋いで、並べたのが
『展翅』なんじゃないかなー、と思うんですよ。
もちろんこれは「夢見の音楽」という、音から自分が勝手に想像したものを使って
作品を捻じ曲げた解釈なので正しいとはまったく思いません。
でも、そういう楽しみ方が許される、そういう楽しみ方をしてみたくなるのが
Euchaetaの音楽なんですよ。継ぎ接ぎのよくわからない音楽の中に、何か整合性が
見つかるんじゃないかと、そんな期待を抱いてしまうのが彼の作品なんですよ。

各曲感想でも少し触れたけど、『展翅』には補完作品というべき『Butterfly Effect』
というミニアルバムが存在します。ちょうどこの前の春M3で出たやつなんですが、
これが「勝手に想像して楽しむことを許される」ことについて触れています。
だから次の記事は『Butterfly Effect』です。『展翅』にもまだ触れていない点が
いくつかあるのでそれもあわせてやります。
もちろん最初に書いたとおり、本題は『Alice』のほうにあるんですが、
Butterfly Effect聴いてると「あーこっちも書かなきゃなー」という欲望が
首をもたげてきたのでしょうがない。最後までモチベが続くのか、最後まで書いたとして
そもそも誰が読むのか分かりませんが、久しぶりにやる気があるのでがんばります。

ではまた。
プロフィール

Author:borozo

最近の記事
カテゴリー

openclose

ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。