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同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

【感想】 真典セクサリス / 少女病

真典セクサリス
(2022/06)
少女病

公式サイト


少女病のラストアルバム。

私は少女病が大好きなので、
どんな出来であれ感想はなるべく最速で絶対に書くぞと思っていました。

ただ、本作はCF出資者が先行して入手し、一般販売はその少し後になるため、
せめて一般販売の発売日まではじっくり聴いて待ってアップしようかなと思ってたんですが……

はい、我慢できませんでした。

いやねえ、無理ですよ無理無理。
一周聴き終わった後のこの気持ちをさあ、どこにも吐き出さずに5日目も待てなどと。
無理無理、無理です。

なので、細かいことは抜きにして!
今のこのパトスにあふれたメチャクチャな感情のまま!
わたしは感想を書くぞー!オラッ!
構成?考察?知らんわい!愚直に1曲目から順番に感想を書いていくだけじゃ!
全部お気に入りですが赤字は特にお気に入り!ウェイウェイ!

(6/23追記)
ネタバレにはほとんど配慮してないので未聴の方はご注意ください。




01-existence

ザ・少女病の1曲目!みたいな1曲目ですね。
歌詞もメロディもこれぞ少女病!という感じで素晴らしい。
最近の作品は「少女病」さん(主宰の人?)が歌詞を書くことが減っていましたが、
この人の分かるような分からんような変な言葉選びのセンスがやはり好き!

最後のサビの盛り上がりがめっちゃアガりますね~
「受け入れろ 吐いてでも 倒れるな 叶うまで」の部分の
MitsukiさんとLicoさんの掛け合いが熱い。
バックのコーラス部隊も徐々にエンジンかかってラスサビで畳みかけ!実に王道的!
総じて「こういうのでいいんだよ」体現したような曲だよな~これからも聴きまくると思います。

はじめの「最期に相応しい言葉を紡ごう」は、最後の曲の最後の台詞にかかってるのかなーと。
納得しかない。これ以上の言葉は無いわな。


02-不可逆性クロックワイズ

シスフェリアのキャラソンです!
ここから4魔女のキャラソンが繰り広げられるわけですが、要するにこれは
5魔女会談の場で自分が神に選ばれるためのアピール合戦をしてるってことですよね。
オーディションですよオーディション。その光景を想像したらめっちゃ面白くないですか?

で、曲のほうですが、3拍子でちょっと民族風な感じもあり、
少女病としてはわりと珍しい曲調な気もします。深い森を彷徨っているような雰囲気が
シスフェリアの揺れる心情をよく表していると思いますね。

そしてシスフェリアの望みは「巻き戻し」。
……なんというかこの人は望みまで平凡というか人間臭いというか。
アイドルマスターシンデレラガールズでいえば島村卯月みたいなポジションなんだろうなあ。


03-有形悲劇を与えたまえ

きゃーアイリーン様ーーー!
前曲の茫洋とした雰囲気とは打って変わって、竹を割ったようなカッコイイ疾走曲!
どこかヒーローソングっぽさすら漂わせるカリスマ性!
私はアイリーンメッチャ好きなんですよね~。シンプルな邪悪で楽しそうだから。
イントロの重厚な弦も好き。

そういえば、シスフェリア曲には「瓦礫の終音」、アイリーン曲には「深紅のエヴェイユ」が
歌詞に出てきますね。こういう細かいファンサービスにもニヤニヤしちゃう。


04-sacred answer

メリクルベル様のキャラソン!
イントロや曲のそこかしこで不穏なピアノや弦が鳴り響く、怪しい雰囲気の曲ですね。
曲の展開もめまぐるしく変わり、『狂聲メリディエ』でわれわれに様々な世界像を見せてくれた
魔女メリクルベルのつかみどころのないキャラ性が現れている印象があります。

この曲は聴きこむごとに味が出る曲だろうなあー。なんせ『狂聲メリディエ』がそうだったから。
今のところはメリクルベルメリクルベルのどころが耳に残っていい感じです。


05-因果律を灼け少女

最後はリフリディアのキャラソン!
この曲は小説版を読んでないと意味がよくわからないかもしれませんね。
結局拒絶されるジーナちゃんおいたわしや……

全体的にスローテンポのバラードですが、
地の底から這いよるようなMitsukiさんの低音パートやギターソロなど、
徐々に暗黒に飲み込まれていきながらドラマティックに盛り上がる展開が良いですね。


06-筋書き通りの運命劇詩

なぜかルクセインのキャラソン!!!???
お前魔女ちゃうやろ何しに来たと言いたくなる構成ですが、
この曲がめちゃくちゃ疾走するバチクソカッコイイ曲なのが困る!!
ルクセイン、お前マジでついにヒーローになるんか!マジか!と一瞬信じてしまうような
マジでカッコイイ曲でやばすぎる。
「最後に傷つくのは、俺一人でいい」とかめっちゃクサイけどかっこいいよルクセイン君!

そしてラスサビの歌詞がさらにかっこよくて身震いしちゃったわ!
”少年"ってお前!!少年!「少女病」を救うのは「少年」なのか!そうか!!
ってはじめてこの曲聴いたときテンションぶち上がっちゃったわ!
まあ次の曲でルクセイン君死ぬんだけど。


07-ラストピース

ここから話がクライマックスに向かっていきます。
語りが増えてきていつもの少女病らしくなってきますが……情報量が多い多い!
このへんの曲は1回や2回聴いたくらいじゃ消化できないですが、
「星謡の詩人」の歌詞やメロディが出てきたり、
「この罪は五つの穢れた残骸と共に」とか「行くよ、セクサリス」とか、
シリーズファンにとっての胸熱展開が盛りだくさん。

そして第5の魔女の正体もここで明らかになるわけですが…いやーこう来ますか!
ひとつ前の記事にも書いた通り、私は第5の魔女をアナスタシアと予想していて、
しかし発売前情報ではセクサリスになっていてアレ?って思って、
「セクサリス=第5の魔女」を前提によくわからん考察みたいなこともしていましたが、
なるほどこういうことですか!!
アナスタシアだけがセクサリスの姿と名前を認識してたり、セクサリスもアナスタシアのことを
気にしていたり、色々伏線もありましたが、そうか、そう来るか~~~!


08-魔女と神の輪廻

五魔女オーディション最後のアピールタイム!って感じの曲。
四人の魔女がころころと歌いまわしていく展開も楽しいですが、
やはり終盤がいいですね!アナスタシアとセクサリスの想いがひとつになったような
MitsukiさんとLicoさんのデュエットが美しいです。
「この世界に未来を与えたい」なんてワードが少女病作品から出てくるとはなあ。


09-to you

ああーやっぱりセクサリスループ説だったか!となって最初聴いたとき
曲が頭に入らなかったです!前の記事を上げる時書くか書くまいかメッチャ迷って
書かなかったんですけど、書いとけばよかったな!どうだ当たったぞってドヤ顔できたのに。
まあ伏線はちゃんとあって、「セクサリス」の歌詞を見るとループしてるとも読めるんですよね。

しかしなあ。
「如何に面白い御伽噺を描けるか。読み手が、望む刺激を求めて脚色していったのだ」って。
言われてるぞ君ら。いや私もだけどな!

性悪な物語を求め続け、セクサリスちゃんの顔がどんどん曇っていくのを愉しむ
セ虐が少女病世界では流行っていたのだろうか…うふふ

ところで、最後の1分半くらいの歌はなんでしょうね。
「これが本当の終焉の歌」とのことですが……天使語?


EX-???

ブックレットでは塗りつぶされていて曲名不明の語りのみのトラック。

「大切な物語が他にもたくさんあるんでしょうね。そのすべてを犠牲にして私が生まれた」
「そして私がこの記憶を思い出すことを、あなたがたは望んでなかったんでしょう」

このへんの語りは、いろいろ考えてしまいますね……
そうだよ、終わってほしくねえよ


10-genesis

いや、この曲……ずるくないですか???
だって、だってさあ、最後の作品の、最後の曲の、最後の30秒であんなこと言われたらさ。
そんなもん忘れられるかよ!ってなるでしょ。ずるいよ少女病。
今まで「作者の言葉」や「作者のお気持ち」を発信することもほとんどなく、
愚直に物語を重ね続けた少女病がさあ、最後にあんなこと言うんだよ。

「あなたはもういないけれど 無数に奏でた 旋律はrefrain 鳴り止まない」
「旋律は大なり小なり感情を揺さぶって 無自覚に心に居座り続けるから」


こんなん言われたらさあ、無理でしょう。泣くよこんなもん!
いやそうなんです。そうなんですよ。これこそが音楽なんですよ!音楽の本質!
音楽って終わらない物語なんですよ、何回も何回も聴き返して、たとえ飽きて聴かなくなっても
ふとメロディを思い出して当時の記憶に思いを馳せたりね。
そういうことをさあ、最後の最後にかっこよく言い残して消えていくんじゃねえよ!ちくしょう!!
ずるいぞ!!

この曲のせいで、私の中で少女病はずっと生き続けることになってしまいました。
こうやってまた、人生で抱える病が増えていくのだ……。



◆終わりに

私が少女病の存在をはじめて知ったのは、私がサンホラ信者として2chのサンホラスレに居たころ、
スレ住民が「サンホラっぽいことやってるサークルがあるぞ!」とリンクが貼られたときでした。
それが『偽典セクサリス』で、「語りがあらまりに似すぎwww」とか
「この曲緋色の風車のパクリやろwww」みたいにスレ住人からは嘲笑われていたのを覚えています。
私自身、当時は生粋のサンホラ信者だったため、いい印象はなく、『偽典セクサリス』は
買わずにスルーしたんですよね。

なので私がはじめて買った少女病作品は『葬月エクレシア』でした。
このころはもう、バンドサウンドと弦楽四重奏主体のシンフォニックロックとして、
少女病サウンドが確立されていて、「これはこれで良いな!」って思ってました。

のめり込むようになったのは『告解エピグラム』のときからでしょうね。
このあたりから物語・コンセプトアルバムとして凝った構成の作品が出てくるようになりましたから。
そっから『慟哭ルクセイン』『残響レギオン』『聖骸メロフォビア』でストーリーの大きな流れができて、
ルクセインやアナスタシア、魔女たちなどキャラ達のことも大好きになりました。

そして目を見張ったのが『狂聲メリディエ』。これは本当に名盤中の名盤だと思っていて、
物語音楽にカテゴライズされる作品の中では確実に私の中では三本の指に入ります。
魔女メリクルベルの造形が本当に魅力的で、聴いても聴いても発見があり驚いたものです。

ただ、その前後から制作ペースががくっと落ちて、何年も新作が出なくなって、
諦めかけていたところにこのラストアルバムのCFの存在を知りました。
嬉しかったですね~。
私は「完結させること」が必ずしも美徳だとは思っていませんが、
それでもね、10年追い続けたシリーズを、ボロボロになりながらも終わらせてくれるのは
本当にうれしかった。

だから最後の作品の出来が微妙でも(もちろん期待はめちゃくちゃしてましたが)
受け入れるつもりだったし、絶対感想も書くって決めてました。

でもね、みなさん。
この出来、この完成度ですよ。本当に素晴らしいですよ。
特に最後の「genesis」、これには制作者の魂がこもっています。
こもりすぎて、呪いのようにすら感じられる1曲です。
わたしは少女病のことを死ぬまで忘れないでしょう。

この作品に出会えてよかった。少女病に出会えてよかった。物語音楽を好きでよかった。
素敵なシリーズを、素敵なストーリーを、素敵な作品をありがとうございました。
またいつか、別のシリーズでも、別のサークルでも、出会える日が来ればいいなと、
そう願っています。

少女病ラストアルバム発売前に情報整理とか


真典セクサリス特設サイト

少女病ラストアルバム、一般販売開始まであと1週間ですね!

先週まであんまり実感がなかったんですが、特設サイトのカッコイイセクサリス様を眺めたり、
小説版を読んだり、過去作を聴き返したりしてるうちにだんだん気持ちが盛り上がり
完結作が気になりすぎて頭がグルグルしてきたので、ここにいったん吐き出しておきます。

最初はちょっとした情報整理のつもりだったんですが、
このタイミングでコロナの濃厚接触者になってしまい、自宅待機で時間ができてしまったため、
なんかたくさん書きました。
予想めいたこともけっこう書いてますが、半分以上願望みたいなもので当てる気はないです。

まあこういう楽しみ方って作品が頒布されて未来が確定しちゃうとできないことなので、
今のうちに好き放題書いておこうかなと。
なんせ10年以上追いかけたシリーズですからね。擦れるだけ擦ってやるぞ!



◆第5の魔女について

かれこれ10年くらい引っ張ってた第5の魔女の正体ですが、発売前情報で概ね推測できますね。

・ジャケ絵のセクサリスの眼の色が変わっている
・CF特典ジャケットイラスト(If世界 5魔女のお茶会)にセクサリスがいる

この2点からまあセクサリスなんだろうなと。眼の色については最初ピンと来なかったんですが、
小説版に眼の色彩で魔女を判別するシーンがあってああ~ってなりました。

第5の魔女の正体については私はけっこう前からアナスタシアだと思ってたので、
セクサリスは完全に予想外でした。むしろ真っ先に候補から外したくらいです。

セクサリスを候補から外した理由はいくつかあるのですが、最大の理由は次の2点

・魔女は「神に見出され、人から成りし存在」であること。
・セクサリスは観測者ポジションであり、他の登場人物とは存在するレイヤーが違うこと。


「遥か昔に滅びた星々の記憶が少女の形をとった存在」という設定であるため人ではないし、
魔女となって物語に直接干渉するのは観測者たる彼女の役割ではない。
セクサリスが魔女になってしまうと設定や物語が破綻しそうだから候補から外したんです。

このような否定材料がありながら、それでもなお物語はセクサリスを第5の魔女に据えた。
これは何を意味するのでしょう?



◆セクサリスについて

そもそもセクサリスってどういうキャラなんでしょうか。
双葉リボンのビジュアルとか、「世界の記憶そのもの」って設定は周知されていると思いますが、
性格や目的など、設定以外のことは私はあまり意識したことなかったんですよね。

ただ今回セクサリスがかなり重要なポジションになるっぽいので、
改めて彼女の、特に性格や動機、目的を示す描写についておさらいしておきます。

まず、『偽典セクサリス』の「星謡の詩人」の歌詞より。



絶望も希望も 何も知らずあらかじめ喪い 透き通った存在

仮象の魂 内なる声  自己を確立するための記憶 巡って 夢を見る 

「全ての断片が揃ったらこの喪失感も消える?」



以上の描写で重要なのは、セクサリスは変化(あるいは成長)する存在であるということです。
はじめは滅びた星々の記憶に由来する「喪失感」だけを持った「透き通った存在」ですが、
夢を巡る(物語の欠片を集める)ことで、自己を確立する(成長する)ことができる。
そして全ての物語の欠片を集めれば、もともと持っていた「喪失感」を手放すことができる。

「喪失感」を手放すということは「滅びた星々の記憶」を手放すとも考えられないでしょうか。
そして「滅びた星々の記憶」を手放せば、残るのは物語の欠片を集めて、自己を確立させた
「セクサリス」という人の形をしたキャラクターだけ。

つまり、少女病の物語には、セクサリスちゃん育成ゲームみたいな側面があるのでは?
「いろんな物語を与えて、キミだけのセクサリスちゃんを育成して喪失感から解放させてあげよう!」
みたいな。

そう考えると、セクサリスの変化を追っていくのが完結作のヒントになると思うんですよ。

というわけで、次行ってみましょう。
『残響レギオン』初回特典の小冊子「セクサリスの見た風景」より。



「あーあ。どうせセカイは終わるのに……」
「無様な道化が群れをなすよ。みんな、笑うフリだけでもしてあげて。ふふっ」

「どんな言葉の羅列にも心動くことなんてないけれど。その光景は少しだけ――」

「私は全てを見届けるわ、フランチェスカ。ふふっ、私の姿を捉えられたのなら、
いつか交わることもあるでしょう。けれどそれはまた、別のおはなし――」




ずいぶんと感情豊かになったなあセクサリス様!
「どうせセカイは終わる」という終末思想は、彼女の持つ「喪失感」に由来するものでしょうが……
性格の悪さとか冷笑的な態度はだいたい少女病のせいだと思う。
あんなろくでもない話ばっかり見せられたらそりゃ歪みますよ。仙水忍みたいなもんです。

また、フランチェスカに対する同情とか、感傷のようなものも窺えますね。
この時のセクサリスには、喪失感だけでない、人間的な感情が芽生えていることが分かります。

あとは「全てを見届ける」と言っているように、この時点での彼女はあくまで観測者ポジを崩さず、
フランチェスカに姿を捉えられたくらいで、物語の登場人物にはまったく干渉していません。

そして最後。小説版『天巡メルクマール』より。



「あなたは、どうするつもり。己の運命。それを目の前にして」
「帰りなさい、あなたの父の元へ」
「……そう、そうなの。そうよね……止めようがないのよね」




なんとセクサリスが人間と会話をしています。
しかも、破滅的な運命に足を踏み入れようとするその人間に忠告をし、
運命が変わらなかったことに落胆する様子まで見せています。

小説版の本筋のストーリーとはあまり関係がないこのシーンですが、
本筋と関係がないからこそ、重要な伏線だと思うんですよね。じゃなきゃ書く意味がない。

観測者ポジに徹していたセクサリスが、物語の登場人物に干渉し、
あまつさえ運命を変えようと行動している。
ここでの心境の変化が、セクサリスが第5の魔女になることに繋がるのではないかと。
私はそう考えています。

なお、小説版メルクマールは『残響レギオン』よりも過去の話ですが、
セクサリスは物語を時系列ではなく少女病作品のリリース順に見ていると私は踏んでいるので、
セクサリス視点ではこの話は残響レギオンよりも後であると考えています。



◆再び第5の魔女について

ここで、セクサリスが魔女になる展開のネックと感じていた設定をもう一度見てみましょう。

・魔女は「神に見出され、人から成りし存在」であること。
・セクサリスは観測者ポジションであり、他の登場人物とは存在するレイヤーが違うこと。


この2点、さっきの内容を踏まえると「なんかいけるんじゃね?」って気がしてくるんですよ。

「人から成りし存在」という点については、セクサリスが人の形をしていること、
作品が進むにつれて、「人間」に接近してきていることからクリアできそうですし、

「観測者ポジション」についても、小説版の描写からセクサリス自身が物語に干渉する意思を
見せているので、魔女になる=物語の登場人物になることにも違和感はなくなります。

セクサリスの設定を丁寧に紐解くと、第5の魔女になるのもありえる展開だと
納得させてくれるのは面白いですね。

ただ、一点だけ引っかかるところがあります。
それは「魔女は自分の意思とは関係なく、神に見出されることによって成るものである」ということ。

つまり、セクサリスを魔女に見出す「神」なる何者かが存在するということであり、
「神」とは何者なのか?という謎を避けては通れないということなのです。



◆神について

というわけで既存情報から「神」の正体を考えてみるんですが、正直なところね、既存キャラの中で
セクサリスを魔女にできるような「神」の役割をこなせる人物なんて一人しか残ってないんですよ。
そう、ミルリーナです。

ミルリーナは『偽典セクサリス』の「星謡の詩人」の名前が出てくるキャラで、
「星謡の詩人」と「セクサリス」の歌詞ではこのように描写されています。



少女の夢から 記憶を詠みあげ 静かに紡いで 識る星音
時と時の狭間 彼方詠うのは 詩人ミルリーナ


記憶から描き出していきたいんだ 夜の来ないこの場所でゆっくりと 欠片集めて……

紡ぎ手は詠い 夢を語る 再生のための終わりを



セクサリスの夢(記憶)を紡いで物語として出力しているのはミルリーナということでしょう。
物語とは「少女病の楽曲群」のことです。
小説版メルクマールにミルリーナ詩編「黒紫の影」として「黒紫のオーンブレ」の歌詞が
そのまま引用されているので、この点は間違いないでしょう。

ミルリーナに関しては描写が非常に少なく、情報がほとんどないので
私もさほど重要視してなかったんですが、小説版メルクマールにおける
セクサリスの台詞を見ると、ちょっと無視できない存在なんですよね。



「……リーナ。」
「ええ…あ……た………でしょ……」
「――…う、リーナ……が、だい……の。――その力は……生。きっと……ええ、わかって……れど、どうせ……わるのに……」




これはセクサリスが壁に向かって「リーナ」と呼ぶ見えない何かと会話しているシーン。
作中には「イリーナ」という人物もいますが、イリーナがセクサリスと会話するのは流れ的に変なので、
ここの「リーナ」はミルリーナの愛称なのではないか?と推測できます。

会話の内容についてはあまりにも伏字が多いのでよくわかりませんが、
最後の「わかって……れど、どうせ……わるのに……」は、
「わかっているけれど、どうせ世界は終わるのに」でしょうね。
「……生」は「再生」かな?

で、このシーンの直後に、さきほどの「人間に忠告するシーン」が来ることを踏まえると、
「セクサリスは世界が終わるという結末は決まっているから人間に干渉したって意味ないと
思っているが、ミルリーナにけしかけられて仕方なく忠告してみた」
という流れなのかな?という想像もできます。

そしてセクサリスが物語へ干渉することをミルリーナが望んでいるすれば、
ミルリーナにはセクサリスに魔女の力を与える動機があるってことです。
セクサリス様に魔女になって無双してほしい!というミルリーナの願望が
彼女を第5の魔女にさせた……とかどうでしょう。
ミルリーナは物語の作者というか、セクサリスの夢の二次創作者みたいなポジションなので、
「神」がやっていることくらいはできるだろうし、
ちょっとくらい自分好みに改変してもええやろ?と悪ノリしちゃうこともあるんじゃないでしょうか。

なお、魔女は「それぞれ異なる神に見出される」という設定があるので、
他の魔女には他の神がいるわけですが、「星謡の詩人」=「神」であるならば、
ミルリーナ以外にも「詩人」が存在していると仮定すれば一応説明はつきます。
それぞれ詩人の推しキャラ=魔女とか……まあさすがに強引かな?



◆結末について

少女病作品って、たぶん『偽典セクサリス』の時点で物語の結末は決まってたと思うんですよ。
「セクサリス」に次のような歌詞があります。



「夢から覚めるとき この世の果てにある ここからあたらしい 世界が生まれ 終わりの先へ繋がる」

「ここからまたいつの日か、世界ははじまっていくのだろう。少女の見る夢から再生される、新たな星」
『その世界の名は、セクサリス』
「今はまだ、永い夢の中に眠って……」




『真典セクサリス』のラストトラックが「genesis(創世)」なので、
セクサリスが夢から覚めて、新たな世界が作られるのが結末なんでしょう。

『偽典』とは、セクサリスの夢の世界のこと。
『真典』とは、目覚めた後の新たな世界「セクサリス」のこと、とか。
ジャケ絵にもそれを示唆するデザインがいくつかあります。

【一般販売版ジャケ】
・『偽典セクサリス』と『真典セクサリス』のロゴデザイン
 真典のロゴは偽典によく似てますが、開いた本から羽が飛び出すモチーフが追加されています。
 開いた本=旧世界、羽=新世界 でしょうか。

・散らばる本のページと蝶
 これもロゴと同じで、散らばる本=旧世界の終わり、蝶=羽化のイメージ、新世界への旅立ち、
 「胡蝶の夢」のイメージもあるのかも?

・満ちる月
 物語の欠片が集まり、ひとつの星(新たな世界)ができるイメージ?

・背景の枯れた木
 これは同じものが『蒼白シスフェリア』のパッケージ裏に描かれています。
 そこにもセクサリスがいることから、ここはセクサリスがいる場所……終末の風景なのかも。

【メロンブックス版ジャケ】
・背景の木
 よく見ると、一般販売版ジャケに書いてある枯れた木と同じような形をしているような。
 ここが新しい世界におけるセクサリスの居場所なんでしょうか。

・黒髪の女性
 今までのジャケ絵等には出ていなかったキャラなので、これがミルリーナなんでしょうか。
 なんか赤子みたいなのを抱いていますが……これミルリーナの願望なんじゃね?
 この世界を手繰り寄せるために今までせっせと物語を作ってたんだとしたら、
 クレイジーな百合っ子が沢山出てきた少女病の中で、最後にとんでもない大物が出てきたことに!



◆その他・まとめなど

気づけばめちゃくちゃ長くなってしまったのでこのへんにしておきます。
他にも気になることメッチャあるんですけどね。
アナスタシアや魔女たちの末路とか、セクサリスの出自とか、ルクセイン君は活躍できるのかとか。

あと、先行公開されている「existence」の歌詞は実に少女病らしい迂遠さがあり、
分かるようで分からない絶妙なバランスになっているのがいいですね。
「崩落のcharade」「品種改良されたFAKE」
「世界仮説偽証」「世界記憶が暗示するように巣食う病理」……

なんとなく「嘘」がフォーカスされているような印象があり、また「星謡の詩人」のフレーズが
引用されていることから、『偽典』と絡めて既存情報を覆す何かが出てくるような気もします。
積み重ねてきたものを豪快に崩すのは少女病の得意技ですからね~。

「existence」は曲も実に少女病らしくて、何回も聞いてしまいますね。
今回はRD-soundsさんが全曲担当しているので複雑かつ長尺の曲が
ズラっと並ぶ気がします。ピクセルビーさんが参加していないのは少し寂しいですが、
コンセプトアルバムを作ることにかけてはRD-soundsさんは折り紙付きですからね~。
物語もそうですが、楽曲面でもとても楽しみです。

それにしても……本当に終わってしまうんですよねえ。
終わらせてくれるのは嬉しいですが、終わってしまうのはやはり寂しいもので。
ただね、音楽というのは一度聴いたら終わりじゃありませんから。
聴き返せば何度でも出会え、蘇るのが音楽の魅力です。
あと1週間、それから先もずっと。
物語音楽のファンとして、少女病のファンとして全力で楽しんでいこうと思います。

【感想】 アウトチックロストサマー / liqueurprime

アウトチックロストサマー
(2019/10)
liqueurprime

公式サイト


もちこまめさんのサークル、liqueurprimeの6thアルバム。

前回の記事(2年半前!)に書いたとおり、
5thの「Che cosa fai in vacanza」はたいへん私好みの作品でした。
そのため、直後の新作である本作についても、
かなーり高いハードルを設けて期待を寄せていたわけですが……
いやはや、本作も素晴らしかった!それも、前作とは全く異なる方向性で、です。

前作は「女の子たちの休日」をオムニバス式に描いた作品で、
音楽的にも、可愛くふんわりとしたガールズポップにまとめられていました。
一方本作は、ひとりの少女にフォーカスを当てた物語が描かれ、
音楽も5曲中3曲がロック寄りのサウンド、歌詞も切実な内容であるため、
雰囲気からして全く異なるものになっています。

とはいえ、やはりこれも「もちこまめ作品」なのであり、
彼女の企画や歌声がなければ表現し得ない作品であると、私は考えています。

夏。田舎。少女。ノスタルジー。
こういったよくある題材をいかに料理しているか……とくと見ていきましょう。



◆ストーリー

本作は、全5曲で1本のストーリーになっていますが、
歌詞の大半は主人公の少女の主観視点からの内心や回想となっており、
少女の置かれた境遇や現状などの客観的な状況説明はほとんどありません。

また、作中で「白昼夢」と表現されているとおり、
描かれている場面が現実に起きている(または起きていた)事象なのか、
それとも少女の夢や妄想により形作られたものなのか、
その境界はあいまいで、判別が難しくなっています。
なので聴く側にとっては、不親切で分かりにくいと感じられるかもしれません。

ただ、こういう「あいまいさ」はおそらく意図的なものなんでしょう。
なぜならこの物語は「大人と子どもの境界で揺れる少女」を描いたものだから。

主人公の少女は、子どもの頃の夏の思い出に囚われていて、
「大人になること」を拒絶しています。
けれど、いつまでも「あの夏」にとどまることはできない。
故郷を離れ、新たな一歩を踏み出さなければならない……
少女はそのことも自覚しているから、
大人と子どもの境界で揺らぎながら自分の気持ちを整理していく。

本作は、少女が自分自身と折り合いをつけるための「内向きの物語」であり、
そこに他人が介入する余地はありません。
だから外野からみて分かりにくいのは当たり前だし、
描かれているものが現実なのか幻想なのかも、どうでもいいことなのです。

こういった「分かりにくいことに意味がある」ストーリー、
私はすごく好きだし、だからこそ色々考えたくなりますよね。



◆ジャケットデザイン

見たことない人は是非とも↑のリンクから公式サイトを見てほしいのですが、
本作はジャケットデザインがとても素晴らしいのです。

何が良いって、「夏」が境界になっていることなんですね。
向日葵や朝顔などの夏のモチーフが、
画面前方の少女と、後方の街や電車を隔てる境界となっている。

少女は結構背が高く、表情もどこか諦めたような、達観したような雰囲気だけれど、
服装は子どもっぽく、手にしたラムネ瓶からは液体の金魚が飛び出している。
液体の金魚は、少女が囚われている「夜祭の思い出」の象徴なのでしょう。
画面前方は「子どもの世界」であり、少女はまだそこに留まったまま。

一方、後方の街と電車は、「大人の世界」の象徴です。
少女は電車に乗って故郷を離れなければいけない事情があるのに、
乗車を拒絶し続け、最終電車を見送り続けている。
故郷を離れれば、大切な思い出は薄れ、いつか失われてしまうから。

子どもの世界と、大人の世界。それを隔てる、夏の境界。
本作を彩る要素が余すことなく配置されたこのデザインは本当によくできています。



◆ロックサウンド

本作は5曲中3曲がロック調の曲となっています。
もちこまめ作品はポップス調の曲が多く、ボーカルもパワーがあるタイプではないので、
ロック調の曲との親和性はあまり高くないと思っていますが、
だからこそ今回はロック調のサウンドを選択したのだろうと考えています。

個人的には、サウンド面にも「境界」の要素があると思ってるんですよね。
現実と幻想の境界。

ロック調の3曲、特に3曲目と5曲目は、逃れられない現実と、
逃れたい少女の葛藤がぶつかり合う楽曲であり、ギターサウンドの重みと、
それに押しつぶされそうになりながら必死に声を張る、
もちこまめさんの歌唱との対比があってこその音楽になっています。

反面、非ロックである2曲目と4曲目は、幻想への逃避が前に出た楽曲であり、
これらがロックと非ロック、現実と幻想が交互に繰り返されるからこそ、
本作のテーマである「大人になることへの葛藤と逡巡」が、
サウンド面からも効果的に表現されているのです。

つまり、ただロック調の曲を入れたというわけではなく、
この「アウトチックロストサマー」という作品を表現するために必要だったから入れた、
と思えるんですよね。



◆各曲感想

01-なつどりの駅
どこか寂しくノスタルジックな、ポストロック風の曲調に乗せて、作品全体の概観を示す曲。
バンドサウンドの合間に時折奏でられるピアノやオルゴールの曲が、
いい感じに郷愁に浸らせてくれます。空間をうまく使った音楽というか。

何より「蝉の鳴き声の変化」が良いのですよ。
冒頭に入る蝉の鳴き声はミンミンゼミなんですが、曲の終盤にはヒグラシになってるんですよね。
否が応にも季節は過ぎ去り、嫌でもそれを受け入れなければいけないという少女にとっての
非常な現実を表せているようで、綺麗な曲なんですがやっぱりとても寂しい曲なんです。

「夏の抜け殻が転がった」から始まり、「甘い繭のなか」「偽物の星空」「街の牢獄」など、
気が利いた比喩表現もいちいちカッコイイし、本作では一番好きな曲ですね。


02-マイロストサマー
曲調と歌詞のミスマッチが味わいのある曲です。
聴いてると気分が浮き立ってくるような、ふわりと踊るような軽快で可愛い曲調なんですが、
それは現実逃避をしているだけで、自身もそれを自覚しているから、
歌詞はひたすら卑屈な言葉が並べ立てられているのが痛々しくて良い。

現実から目を背け、夢の中に逃避している様子を、
「クジラが空を泳いだら」とか「夏草を雪が包んだら」といった、
明らかに非現実と分かる描写で示しているのが面白いですね。


03-祭囃子は夢の中
本作一番の疾走ロックチューン……なんですが、これまた歌詞が卑屈!
疾走感のあるサビが「逃げたいの逃げたいの」「苦しいの苦しいの」という。

「最後に眺めた花火の色は何だっけ」という歌詞が切ないよなあ……。
どんなに大切な思い出も、時が経てば少しずつ薄れて色あせて、そうして大人になってしまうんだ。


04-Wreath
この夏に留まり続けて、この思い出をいつまでも繋ぎ留めていたい、という祈りが込められた曲。
作中唯一のバラードで、メロディがとても綺麗で、ドラマチックです。

物語を知る上で重要なのが、歌詞の中に「金木犀」が出てくること。
金木犀は秋に咲く花で、この場面は夏祭りをともに過ごした「君」との別離のシーンと思われます。
だからこそ彼女は夏に留まろうとするのかなあ、とか思ったり。秋は別離の季節だから。

ところでWreathとは花冠という意味のようですが、転じて「輪」そのものの意味もあるそうです。
「もう何処にも行かないように 不器用で歪な輪を結んだ」という詞には色々な含意がありそう。
(本作のMVには、過去の自分と思しき子どもの首を絞めて「季節を止めてしまう」シーンがあります)


05-過ぎ去る最後の季節に
最後の曲も疾走ロックチューン。この曲も決して前向きではないのですが、
過去の自分にも後押しされながら、電車に乗り、故郷を離れる少女の様子が描かれます。

過ぎ去る季節の音に気付いてしまった
いまだけは心に灯る 誰にも秘密の気持ち
他の全てが溶けて失っても 御伽噺だと笑って


この最後の一節はどう解釈すればいいのか、かなり悩みましたが……
たぶん、この一節だけは、本作の受け手に対して向けられた言葉なんじゃないかな。
少女が抱くこの葛藤も逡巡も、いずれまた色あせてしまうから、
「御伽噺(=フィクション)」としてであっても、いつまでも繋ぎ留めていられるように。
そういう祈りから、こぼれた言葉なんじゃないでしょうか。



◆まとめ

ストーリー、デザイン、サウンドと全ての要素に必然性があり、
コンセプトアルバムとして完成度のとても高い作品だったと思います。

けっこう受け手を突き放してくるタイプの作品でもあるので、
もちこまめさんの他作品と比べると少々、取っつきづらさはありますが、
聴き込んで少女の気持ちに同調できるようになってくると化けますね。

2021年12月現在、BOOTHストア等でまだ購入できるので、気になる人は買いましょう。
『秒速5センチメートル』みたいなのが好きな人には向いてるんじゃないかな!

【感想】 Che cosa fai in vacanza / liqueurprime

Che cosa fai in vacanza
(2019/04)
liqueurprime

公式サイト


ここ2年くらい、同人音楽をまったく聴いていませんでした。
興味の対象が他に移って、なんとなく聴かなくなっちゃったんですよね。
このままフェードアウトかなと思ってましたが、今回の春M3が自分の観測範囲で盛り上がっていて、
ちょっと羨ましくなったので先日メロンブックスで見つけてきたのがこの作品です。

ジャンルは女性ボーカルのポップスで、試聴したときにまずピンときたのは
「この歌声!ななひらさん!ななひらさんに似てる!」という点でした。
鼻声がかったロリ系の声質が似ているのもそうなんですが、それ以上に歌い方が似ています。
歌に対するひたむきさ、とも言いますか。それぞれの楽曲にしっかりと向き合って、
大袈裟な言い方をすれば「音楽に命を吹き込んでいる」とも思える歌い方。
ロリ・電波系ボーカルでそれができるのはななひらさんくらいだと思っていましたが、
今作のボーカル、もちこまめさんにも確かに通じるものを感じたのです。

それもそのはずで、彼女はボーカルであるとともに、作品のプロデュースも行っています。
過去作の情報を見ても、作詞・作曲・デザイン等は外注のため毎回異なりますが、
ボーカルと企画は必ずもちこまめさんが担当しています。
ボーカル=企画である場合、基本的には「歌いたいものを作る」という方向性になるはずで、
そのためか彼女の歌からは「この曲はこういう風に歌いたい!」という強い熱を感じます。

歌の上手さとか技術とかは私はよく知りません。
しかし熱というのは知識などなくても肌で、感覚で伝わります。
そして同人音楽とは、作品を通してもっとも近い距離でその熱を受け取ることができる場の一つであり、
受け取ったからこそ私はいまここで3年ぶりに感想を書いています。


◆コンセプトについて

タイトルのChe cosa fai in vacanza(あなたは休日をどう過ごしますか)が示すとおり、
今作は「休日をひとりで過ごす女の子」をテーマとしています。

-甘酸っぱくていじらしくて、だけどちょっぴり憂鬱で、それでもきっととびっきりな休日がくるの。-

特設サイトのテキストの引用ですが、まさにこのとおりの内容ですね。
女の子ならではの色々な感情が描かれ、それらを「休日の過ごし方」という枠の中で表現している。
この枠の設定が絶妙だなーって思うんです。聴く側にも作る側にも丁度いい自由度というか。
作詞作曲も全部外注なので、あんまり設定ガチガチだと調整が大変だろうし、
かといって曖昧すぎると統一感を損ねてしまうおそれがある。
特設サイトとかCDの帯裏なんかにひっそり書いてあるフレーバーテキストくらいの情報が
イメージとしてちょうどよくて、作品の形態といい感じに噛み合ってるんですよね。


◆曲・詞・歌について

全5曲、収録時間20分程度のコンパクトな作品で、曲調は打ち込みによるガールズポップ。
作曲者は曲ごとに異なりますが、どの曲もいかにも女の子って感じの甘くてふわっとした
曲調に統一されています。おおむね、コンセプトから想像される内容どおりでしょう。
やや変化に乏しいきらいもありますが、主役はあくまでもちこまめさんのボーカルですからね。
歌い回しで十分に変化をつけているので、バランスは取れています。

アルバム構成としては、1曲目で作品全体の概要を示し、2~5曲目で各々の休日を描くというもの。
進行に従って段々と明るく、前向きになっていく構成が素晴らしいですね。
同居人が去り、広くなった部屋でひとりお茶をしながら気持ちの整理をする2曲目から始まり、
幼馴染の男の子に対する。悶々とした思いを抱えて落ち着かない週末を過ごす3曲目、
漠然とした憂鬱や不安を振り払うように、努めて明るくあろうと外に繰り出す4曲目、
ひたすら元気で前向きな5曲目と、順番どおりに聴くことで元気が湧いてくるような構成。
連休終わりの沈んだ気分もこれを聴けば少しは晴れる……かも?

そしてもちこまめさんのボーカル。上のほうにも書きましたが、彼女の歌には「ひたむきさ」を
強く感じるんですよね。今作は1曲1曲、女の子の繊細な感情が描かれており、それを歌の中で
いかに表現するかが大事なんですが、ちょっとオーバーなくらいに歌い方を変化させています。
1曲目はフラットに、2曲目はちょっと儚くアンニュイな感じに、3曲目は慌ただしく揺れを大きく、
4曲目は気持ちを抑えつつもサビで溢れさせるように、5曲目は底抜けに明るく元気に……とね。
それでいて声質が私の大好きな鼻声気味ロリ系ボイスというね。最高としか言うほかない。
万人に好まれる、ということは無いと思いますが、刺さる人にはぶっ刺さるはず。


◆各曲感想

01-私だけのWeekend
雑踏の中にもひとりひとりに物語があり、それぞれの休日を過ごしている……という導入です。
曲としては作中でもっとも主張控えめですが、こういう曲があると後の曲に対する
イメージが湧きやすくなりますね。

02-Piece of the world
同居人がいなくなった、欠けた世界でひとりティータイムを過ごして気持ちを整理するお話。
Piece of the worldというタイトルがハイセンスですよね。彼女にとって、同居人がいた部屋こそが
世界だった、という。喪失感に少し目をそらしつつ、時間をかけてゆっくり受け入れていく、
そういう複雑な感情が、溜息のような歌声によってふわっと紡がれていくのが心地よい。

03-Rocky☆Start
Mamyukka等でお馴染みのオッカさんが作曲。オッカさんらしい飛び跳ねるようなメロディが
「ちょっと気になっていた男の子から別の子に対する恋愛相談を受けて自分の恋心に気づいて
ジタバタしたりヤケクソショッピングに繰り出したりする」この曲にピッタリ嵌ってますね。
ボーカルもそれに呼応するように揺れや起伏を大袈裟なくらい強くしているのでドタバタ感が凄い。
ヒロインの子には悪いですが聴いてて大変微笑ましく、楽しい曲ですね。

04-ShinyHoliday
今作で一番の曲だと思います。前向きな曲ではなくて「前向きであろうとする曲」なのが良い。
嫌な気分を抱えつつも家を飛び出してあちこち散策して振り払おうというヒロインの気持ち、
それを汲んであえて抑え目に歌うボーカル、それらを開放するような素朴で綺麗なサビメロと、
三位一体でピッタリです。ラストのサビは夕暮れのシーンなんですが、ここの転調が一層素晴らしい。
休日が終わり日が暮れたけど、代わりに心は晴れている……その軽くなった気持ちを、
転調で表現しているんですよね。ラスサビで転調する曲じたい私は大好きなんですけど、
こんな素敵な含意まで示されちゃあ……そりゃあもう最高としか言うほかない。

05-Ready Go Round
これまでの曲にあったモヤッとした感情を吹き飛ばすようなひたすら明るく元気な曲。
サビの4つ打ちリズムの心地よさと、途中の元気一杯なラップパートがお気に入りです。
最後にこういうシンプルに明るい曲をもってくることで、
「それでもきっととびっきりな休日がくるの」というテーマに繋がるのが良いですね、


◆まとめ

久しぶりに新しく購入した同人音楽作品で、これほどの作品に出会えたのは僥倖でした。
ここ数年は商用のゲームや音楽によく触れていましたが、やはり同人音楽ならではの
作品というのは同人音楽でなければなかなか出会えないのだなと再認識しましたね。
余計な中間項を考えなくていいので、作品そのものと真っ向から向き合える、
その楽しさ、純度の高さは他ではなかなか味わえません。
今作はとにかくボーカルが最大級に自分好みであり、その補正が強くかかっているので
この感想にあんまり客観性はないと思います。
とはいえ、コンセプトの面でも十分練られているのは間違いなく、また過去作でも
今作とは大きく異なる雰囲気のものもあり、しばらくはこのサークルに注目していきたいですね。

【感想】 狂聲メリディエ / 少女病

狂聲メリディエ
(2015/08)
少女病

公式サイト


少女病の2ndメジャーアルバム。
1stの『残響レギオン』から4年半、直近アルバムの『創傷クロスライン』からは3年という、
長い空白期間を経てのリリースだっただけに、前評判も不安半分期待半分、
リリース後の評価も賛否両論はっきり分かれた作品だったように思います。
正直なところ、私も第一印象はあんまり良くなかったですね。
「廃園イデア」の引きが最高だっただけに、どうにも肩透かし感があって。

ただまあ、これは断言しますけど、今作は考察が面白いです。
間違いなく少女病で一番面白い。
少女病作品の魅力のひとつに「シンプルで分かりやすい悪辣なストーリー」
というのがありますが、その「悪辣さ」が今までよりも多層的に描かれているのがポイント。
歌詞を一読しただけでは見えなかった部分が、聴き込み読み込みを進めるうちに
だんだん見えてくるようになる快感……まさに私が好きなタイプの作品です。

ほんとは考察記事を上げるつもりだったんですが、たらたら説明を書いてると
どうしても野暮ったくなってしまうので断念しました。
いちおう、方向性としては「メリクルベルの目的と思考」を中心にして
「自作自演説」「クレイジーサイコレズ説」「語り手黒幕説」「神への反逆説」
という4つの解釈を立てて云々、というのを書いてたんですけどね。
考察とは言いがたい妄想・願望レベルの内容も多かったのでお蔵入りです。
二次創作のネタとしては面白いと思うので、私にその能力があれば書いたんですけど。

まあ、とにかく色々な解釈ができて楽しい作品であることは間違いないです。
「不完全犯罪依存」「観客」「世界像」「偽幸者」「リンゴ」あたりのワードが
何を意味し、誰を対象としているのか……それを考えるだけでも楽しい。
中心にいるのはやっぱりメリクルベルで、彼女はなかなか奥ゆかしい人物ですよ。
言動は清々しいまでにヒールですが、「そのように振る舞っているだけ」と考えると、
途端に愛おしさが湧いてきますからね。
捉えようによっては最後の「多分、ね」や高笑いが全く別の意味に聞こえるようになるわけで。

スルメ盤という言葉がありますが、今作はまさにそれ。
解釈を重ねるごとに曲自体の印象もどんどん良くなっていくという。
これを全部計算ずくで作っていたら相当凄いと思うんですが、
正直それは微妙かなーという気もします。偶然の産物のような気が。
とはいえ新作も良かったですし、下火傾向の物語音楽を牽引する存在として
少女病には今後も気を吐いてもらいたいですね。


以下は曲の感想です。


01-不完全犯罪依存症

良くも悪くも今作を象徴するような曲。
最初聴いたときはいきなり五魔女会談なるものが始まりポカーンとなるけど
歌詞が馴染んでくると後半からの加速感が気持ちよくなってくる。
物語と書いてわざわざ<ストーリア>と読ませる中二ぶり、最高ですよね。
あとケンカの仲裁をするアイリーン様が萌えキャラ。

考察においては、「第一の魔女」であるシスフェリアが「新参の魔女」なのが何気に重要。
魔女のナンバーは魔女に選ばれた順番でつけられているわけではなく、
物語の語り手が意図的に決めているということになりますからね。
「語り手黒幕説」はこのへんが取っかかりになってたり。
少女病作品の語り手は『偽典セクサリス』でキャラクターとして示されてるので、
単なるメタ解釈ではないですよ。いちおう。


06-Still Unforgiven

RD大先生がノリノリで歌詞書いてるのが伝わってくる曲。
「何度も何度も頭を振って~」のくだり、フィーナさんが髪振り乱してヘドバンしてる様子が
浮かんできてつい笑ってしまうという。

この曲もねー、メリクルベル(メイメイ)の悪意というよりは語り手の悪意が強いんですよね。
フィーナの物語を『告解エピグラム』としてパッケージにしてるからこそ
この話は救いようが無くなるわけで。そもそも「Still Unforgiven」というタイトル自体がアレだし。
もしかしたらフィーナの未来はホントにメイメイが示したとおりで
メイメイは親切で言ってやってるだけかもしれんのですよ。
どうもね、この作品全体がメリクルベルを悪役に仕立て上げようとしている気がして、
そういう薄気味悪さがあるから解釈という名のこじつけを色々考えたくなる。


08-偽りなき聲

RD大先生がノリノリで(略
最初聴いて思ったのは「あこれ『The beautiful world』だ」でしたね。
メリクルベル=八雲紫だし『狂聲メリディエ』は『辿/誘』だわーという凋叶棕信者らしい感想。

この曲で描かれているメリクルベルとメイメイの関係をどう解釈するかってのが
今作のストーリーのキモですね。メイメイがメリクルベル溺愛しまくってるのは伝わるが
メリクルベル→メイメイの気持ちはほとんど描かれてないのがポイントだったり。
双方向の百合か一方通行の百合か、という……ここで一方通行とした場合が
「クレイジーサイコレズ説」になります。もちろんメイメイがクレイジーサイコレズです。


09-狂聲ドミナシオン

テンション高い曲だけど会食シーンだからなこれ!?
飯食う場面なのにドコドコドラム鳴らして疾走するのが面白すぎる。


10-最終楽章:魔女と七人の美しい少女

歌詞の捉え方によって印象ががらりと変わる曲。
ミリリ視点ぽいけどメリクルベル視点でも成立する歌詞が面白いですよね。
偽幸者、ショーケース、観客、毒リンゴ、世界像……このあたりのワードの多重性がたまらんのです。
そして最後の台詞と高笑い……あの笑いは誰に対する笑いなんでしょうねえ?
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