同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

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[感想] 展翅 / Euchaeta

展翅
(2012/05)
Euchaeta


Euchaetaは2年くらい前から個人的に注目していて、当時からメロディ良し音作り良し
コンセプト良しでドストライクの作風だったし、その後も自分好みの音楽を
作り続けてくれている数少ないサークルです。特に3作目の『Alice』は、自分が同人音楽を
聴く上でずーっと考え続けていたこと…「音楽で物語を表現するとはどういう事か?」
という疑問がひとつのテーマになっていて、私の中では好きとか嫌いとかを超えた
特別な作品に位置づけられています。
だからホントに語りたいのは『Alice』なんだけど、そのためにはまず2作目の『展翅』を
整理しておかなくちゃならない。何故なら『Alice』は『展翅』の応用だと考えているし、
何より現行作品の中では『展翅』がもっとも「Euchaetaっぽい」からです。
そもそもEuchaetaというサークル自体がおそらくあまり知られてないと思うので、
まずは『展翅』をベースにEuchaetaとは何ぞや?というところから始めます。

……まあ何というか、これほどの作品を出していればそのうち勝手に人気出るだろうと
思って静観していたんですがねえ、情報サイトもレビューサイトもちぃーーーーーーっとも
取り上げてくれないし、流石にちょっとイライラしてきたのでもう私が一から十まで
徹底的に語ってやろうと思ったんですよ。お前らがやらんのなら私がやってやる!


◆夢見の音楽

Euchaetaがどういう音楽か、というのは自分の語彙力では表現しづらいんだけど、
いちおう作者の言によればプログレッシブエレクトロニカらしく、確かに変拍子とか
転調が多いのでプログレ要素はあるんでしょう。ただエレクトロニカってのは
ちょっと微妙なところで、実際はクラシックっぽいピアノとか管弦楽をベースにしつつ
民族・民謡チックなフレーズを入れたりギターロックをやってみたりとかなり多彩。
もちろんエレクトロ要素の強い曲も多いけどそれだけではないってことですね。
基本はインストだけど所々ボーカル曲もあり、作者本人が歌ってたり女性ボーカルを
起用したりボカロ使ったりとこちらも様々。そもそも一言で言い表すには無理がある。

で、こう書くと散漫な印象になると思うけど実際はそれほどでもなく、メロディと
音作りが一貫しているから統一感はある。慣れると数秒聴いて「あ、Euchaetaの音だな」
と判別できる程度にはしっかり作ってある。特に民謡が耽美化したような独特のメロディは
耳に残ります。東方のメロディが好きな人は比較的好みに合うんじゃないかな。
音作りに関しては低音がかなり強調されていて、ぐわんぐわんと唸るベース音が
聴く者をEuchaetaの世界に引きずり込む。そんでまたこの低音が奏でるメロディがまた
やたら綺麗で歌心があったりして、ピアノや笛などの主旋律とあわせてメロディの層が
できるんだ。この重層感が彼の音楽のキモ、幻想を生み出す源泉です。

さて、ここまでEuchaetaの音楽をつたない語彙で説明してきましたが、結局のところ
大事なのは「どういう音楽か」ではなく、「この音楽を聴いて何が想像されるか」です。
そこにどんな幻想が宿るのか……私はね、この音楽は「夢見の音楽」だと思うんです。
「夢を見ている感覚」を音楽にしたもの。
夢ってのはだいたい目覚めてから思い出すと場面の繋がりとか会話や行動が滅茶苦茶で
何だこれって思うんですけど、夢を見ている間はそんなこともなく支離滅裂な物語を
ふーんって感じで受け入れちゃうじゃないですか。この音楽から想像されるのは、
そういう感覚なんですよ。曲と曲、作品と作品はどこがどう繋がっているのか、
それとも全く繋がっていないのか。よくわからないけど、何となくひとまとまりのもの
として受け入れてしまう。彼の音楽全体がそういうふわふわした曖昧なものに
包まれていて、それに浸るのがたまらなく気持ちいい。夢見の音楽。

そして2作目『展翅』はそういった「夢見の音楽」の雰囲気がもっとも色濃く出ている
作品です。各曲はそれぞれ色合いが異なっていて、しかしどこかで繋がっているような
気もする。そんな感覚を与えてくれる曲たちを、まずは1曲ずつ見ていきましょう。
ちなみに初回版とリマスター版がありますが、主に初回版について言及してます。
そっちのほうが好みなので。


01-綺譚
ゆったりとしたピアノが変拍子を纏いながら不穏なメロディを奏でていくイントロトラック。
ピアノは基本的に同じメロディの繰り返しだが、奥のほうでチャカポコカラコロと
変な音がずっと鳴り響いてたり、テレビの砂嵐めいたノイズやらが左右に動き回ったり、
途中からボーカロイドのコーラスが入ってきたりして不穏さに拍車がかかる。
終盤になるとピアノのメロディ自体も沈むように少しずつ変化していく。
ちなみに綺譚とは「美しい物語」という意味らしい。この曲が美しいというのは
少し違和感があるかもしれないけど、実がそれがちょっとした伏線だったりするので
気に留めておくといいかもしれません。


02-流彩色 / Last and Remember
1曲目とはうってかわってギターとピアノが絡み合う疾走感のあるボーカル曲。
1曲目がものすごく中途半端なところで途切れて突然この曲が始まるんだけど、
この不連続っぷりがとても「らしい」なと思う。夢見の感覚。
曲については、歌メロは非常にキャッチーだが作者自身によるボーカル(男)は
好みが大きく分かれるところ。お世辞にも上手いとは言えないし声質もイケてない
オーラに満ちてる。自分もちょっとこれは・・・と思ってたんだけど、リマスター版で
ボカロになってるのを聴いてやっぱりこっちのほうが良いなと思ってしまった。
どうやら中毒になってしまったようです。うん、まあ味はあると思うよ。
ただやっぱりEuchaetaはボーカルパートよりもインストパートのほうが聴き所で、
この曲も冒頭からピアノが花吹雪のように踊りまわっていてやたら華やかだし、
何よりベースなど低音部がうねうね動き回っているのがたまらない。特に2分過ぎ、
「幸せな物語」で歌が途切れ、一瞬の静寂の後ベースソロのパートに移行するところは
Euchaetaの真骨頂。層状を為す音の群れから低音だけを抜き出したときの、この侘しさは
彼の音楽でなくては味わえない。少なくとも自分は他に知りません。


03-風立つ沢の咲花 / Act As Bloom
これもボーカル曲で、イントロのワイルドアームズみたいな笛のメロディが印象的。
金比羅船々みたいなアップテンポな民謡調の楽曲に仕上がっており、いわゆる同人音楽の
「民族系」とは少しタイプが違う。とはいえこの作品の中では一番ストレートで聴き易い
曲調で、ボーカルは相変わらずアレだが私も大好きな曲です。ラストサビからアウトロの
畳み掛けるような展開に胸が躍るね。
流彩色とあわせてボーカル曲はこの2つだけで、いずれも喪失したものに想いを
馳せている情景が浮かびます。ただ流彩色は「色」、この曲は「花」を媒介にしている。
同じテーマを扱う上でこういう差異を持たせるのは面白いところ。


04-砕ケ星
アップテンポなボーカル曲が続いたところでピアノ中心の落ち着いたインスト曲。
作中では一番儚くて好きなメロディです。ピアノの主旋律と低音部の副旋律が
美しく絡み合いながら、中盤から笛・鉄琴・弦楽器なども交わり、終盤でぶわーっと
盛り上がる。中盤から終盤に差し掛かるところ(1分56秒あたり)でここでも一瞬の
静寂を挟むのがほんと素晴らしい。基本的に音を雑多に敷き詰めるタイプの音楽なのに、
ときおり絶妙なタイミングで隙間を挟んでくるのが憎らしい。音楽なんて作ったことない
私が才能に嫉妬してしまうレベル。この曲試聴で公開されてるけどお前らこれ聴いて
何も感じないわけ?マジで言ってんの?って思ってしまうけど、まあ人それぞれ
なんでしょうね。繰り返しますが私はこの曲ほんと素晴らしいと思います。


05-春は君の為に散る / Forever in a While
お次はノイズである。イントロのノイズのあと、かすれた笛のような音が主旋律を担うが、
ノイズめいた電子音がバックで鳴り続ける。この電子音ノイズのリフ(?)がやたら
メロディアスで妙に耳に残るのが面白い。2分30秒あたりからノイズが晴れてサビに突入し、
壮大な展開を見せるもすぐに収まり再びノイズリフが入ってくる。わりと地味な曲だけど、
当たり前のようにメロディは良いし曲名の意味とか色々考えていくと楽しめる曲でもある。


06-欠片の聴客 / Public Pieces
今度はチップチューン系の音が中心になる。この曲はメロディの展開が少なく、
同じメロディを繰り返しながら少しずつアレンジが変化していくタイプ。
弦楽器やオルガン、ドラムンベースなどの音がメロディを彩っていく、ある意味
非常にEuchaetaらしい曲で、1stアルバムにもアレンジ違いで同じ曲が収録されている。
とはいえこの曲も地味で、しかも1stでも聴いた曲なのでこの辺は多少だれるかな。


07-瀟洒にして静謐なる悠久を貴女に
ほとんどピアノと弦楽器のみで構成されるクラシック系の楽曲。タイトルどおりの
気品のある雰囲気が心地良い。構成はシンプルながらメロディがやはり重層的で、
ピアノと弦の高音低音あわせて様々な旋律が折り重なっておりとても美しい。
特に中盤から入ってくるウッドベースの音が心地良い。最後は打楽器も入ってくる。
彼の音楽全体に言える事だけど、曲の進行に従ってどんどん音数を増やすことで
ドラマティックに仕立てるやり方は面白い。さながら音のパレードのようです。


08-哀悼
来ましたよ哀悼!5~7曲目の地味曲でだれてきた聴者の度肝を抜く今回の最高傑作!
嫌がらせのような轟音ノイズから始まり桜吹雪のようなピアノが舞い始め、航空機の
エンジン音のような気色悪い低音が耳を蹂躙して1分30秒、ストレスをぎりぎりまで
かけたところで爆発音めいたブレイクが入る!こっから本番!!
ストリングスが怒号のようなメロディを掻き鳴らし、ウゥゥゥゥ~↑とサイレンが
クレッシェンドで暴れ回り、打楽器がけたたましく鳴り響きさらにストレスをかける!
そして2分6秒、こっからが本番の本番!!!
ノイズを突き抜けるようにEuchaeta特有の美しいピアノメロが流れ込んでくる!
ここからの30秒はマジで至福の瞬間!ノイズに負けない雷雨の中に咲く花のような
ピアノメロの儚さ美しさときたらもうね……自分の求めていた音楽のカタチがここにある!

……がんばってこの感動を表現しようとしたけど無理ですね。でもね、それまでの
ゆったりとした曲の連打からいきなりコレは心底驚かされたしめちゃくちゃカッコイイ。
この作品にはクロスフェードデモが無いんだけど、無いのも仕方ないですよ、これは。
事前情報があってはこの衝撃は得られまい。だからここに書くのもためらったけど
まあ知らん。どうせ文字で書いても伝わらんでしょう。ともかく「作者頭おかしい」
と思った楽曲に出逢うのは久しぶりでしたね。こういう曲に出逢うために私は音楽を
聴いているんですよ。イメージとしては…何でしょうね。ラピュタで竜の巣に突っ込む
シーンがあるけど、ああいうクライマックス感が思い浮かびます。これに「哀悼」って
名前つけるセンスがイカレてるよね。静謐な祈りの中に渦巻く激情って感じ。
副題が塗りつぶされて読めなくされてるのもそそるギミック。誰が、どういう状況で
かような「哀悼」を示しているのか、想像は膨らむばかり。


09-The Aquaregia Loves / In the Butterfly Effect
哀悼の超展開から一転、突然ピアノソロの落ち着いた曲に変わる。
この曲はデモ版みたいな感じで45秒しかなく、完成版は最新作の『Butterfly Effect』に
収録されている。もともとは『展翅』に完成版を収録する予定だったみたいだけど、
しかしこれはこれでジェットコースター感みたいなのがあっていいと思う。


10-展翅
これまた変な曲で、弦楽器が跳ねるようなメロディを奏で、そっからオーケストラが
入ってきて大団円みたいな謎の雰囲気を醸し出す。哀悼からここまでが超展開すぎて
何がなにやら全然分からないけど自分はここの流れが作中で一番好きだったり。
そう、これがEuchaetaの音楽だ。不連続なものが強引に繋げられてる感じ。これがいい。


11-鈴祭の雨
最後を飾るのはやけに陽気な曲で、雨降りのSEの中、笛と太鼓がお祭りのような音楽を
奏でるといったもの。最後がこれでいいのか、という気はするのだが、いや、最後が
これだからこそいいのだ、という気もする。あまり意味は分からないけど、こういう
謎の説得力がEuchaetaなのである。夢見の音楽。寝覚めはいいほうが良いに決まっている。




はい。
自分にしては珍しく『展翅』を全曲音楽っぽい切り口で書いてみました。
この作品はやっぱり曲が好きなんですよね。「これを待っていた!」って感じのものが
いくつもある。だからコンセプトとか物語とか云々の前に自分にとってものすごく
「しっくりくる」音楽なんです。
そして「しっくりくる」からこそもっと考えたくなる。作品を深く理解したくなる。
だからここからは今度はコンセプトとか物語のほうから少し考えてみましょう。


◆夢想の標本

まずこの作品は、おそらく「アルバムを通して一本に繋がる物語」ではないと思います。
どちらかといえば、個々の独立した物語がキメラ的に無理矢理くっつけられている。
夢見の音楽。『展翅』というタイトルから、人々の夢想が標本のように繋ぎ止められ、
展示物として並んでいるイメージですね。ただし、それらは雑多に並んでいるわけではなく、
展示物には一貫したテーマが与えられています。
桜です。

「桜の樹の下に逢いに往こう」
これは特設サイトにも帯にも使われている、「The Aquaregia Lovers」の一節です。
桜の樹の下にあるのは何か、といえばそれは死体と相場が決まっていますよね。
梶井基次郎然り、東方妖々夢然り。フィクションではよくあることです。
そして当然、「桜の樹の下に死体が埋まっている」という話は空想の産物に過ぎません。
そこで「桜の樹の下に逢いに往く」を、「桜を見て人々が抱く空想に逢いに行く」と
置き換えてみるのです。咲き誇る桜を、あるいは散りゆく桜を見て人々は何を想うのか。
何を夢見るのか。それを標本のように美しく音楽で飾って、繋いで、並べたのが
『展翅』なんじゃないかなー、と思うんですよ。
もちろんこれは「夢見の音楽」という、音から自分が勝手に想像したものを使って
作品を捻じ曲げた解釈なので正しいとはまったく思いません。
でも、そういう楽しみ方が許される、そういう楽しみ方をしてみたくなるのが
Euchaetaの音楽なんですよ。継ぎ接ぎのよくわからない音楽の中に、何か整合性が
見つかるんじゃないかと、そんな期待を抱いてしまうのが彼の作品なんですよ。

各曲感想でも少し触れたけど、『展翅』には補完作品というべき『Butterfly Effect』
というミニアルバムが存在します。ちょうどこの前の春M3で出たやつなんですが、
これが「勝手に想像して楽しむことを許される」ことについて触れています。
だから次の記事は『Butterfly Effect』です。『展翅』にもまだ触れていない点が
いくつかあるのでそれもあわせてやります。
もちろん最初に書いたとおり、本題は『Alice』のほうにあるんですが、
Butterfly Effect聴いてると「あーこっちも書かなきゃなー」という欲望が
首をもたげてきたのでしょうがない。最後までモチベが続くのか、最後まで書いたとして
そもそも誰が読むのか分かりませんが、久しぶりにやる気があるのでがんばります。

ではまた。
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