同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

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[考察もどき] historie / fromadistance

historie
(2010/08)
fromadistance

公式サイト

◆分類
東方インストアレンジ
実験音楽

fromadistanceの2ndアルバム。
「歴史とは何か」をテーマとした作品で、前作同様、考察要素を含んでいます。
もちろん難しいことを考えずとも、重厚で神秘的な、「いかにも歴史っぽい」音作りに
耳を傾けるだけでも十分楽しめる作品です。しかし、作者であるspctrmさんは
制作にあたって膨大な設定資料を用意したと聞きますし、作者の思惑を考えながら
触れてみるとまた違った面白さが見えてくる作品だと思います。
そこで、私が考えたことを少しばかり書いてみます。今更感がありますが・・・。

まず、今作の頒布前、ジャケットとトラックリストが公開されたとき
私はひとつ気にかかったことがありました。
・・・諏訪子のジャケットなのに、諏訪子の曲がない
ジャケットにでかでかと描かれている「かっこいい諏訪子」
後ろの壁画らしきものには蛇と蛙が相対する様子が描かれ、
諏訪子の腕には鉄の輪、それに絡みつくツタのようなもの・・・
ここまでモチーフを重ねられれば、誰だって「諏訪大戦」を連想するでしょう。
なのに一番のキモであるはずの諏訪子の楽曲がないというのは奇妙な話です。

もっともこの疑問は購入後に氷解することとなりました。
諏訪子の曲・・・「ネイティブフェイス」のアレンジはボーナストラックとして
アルバムの最後に収録されていたのです。
しかし、これはこれで新たな疑問が湧いてきます。
「何故ボーナストラックに追いやられてるのか?」
タイトルも存在しないこの楽曲にどんな意図があるのでしょうか。

その答えは、やはり今作のテーマ・・・「歴史とは何か」にあるのでしょう。
これに関して、公式サイトでは以下のような文章が引用されています。

My first answer therefore to the question, What is history?,
is that it is a continuous process of interaction between the historian and
his facts, an unending dialogue between the present and the past.
               - Edward Hallett Carr (what is history?, 1961)


「歴史は現在と過去との対話である」
有名な言葉のようで、歴史学の入門書なんかを見てみると、「歴史」の定義について、
大体冒頭にこういう内容が書かれています。どういう意味かと言うと、
歴史というのは現代の歴史家の解釈によって構築され続けるものであるから、
必ずしも「過去に起こった真実」をそのまま示すものではない、といった感じでしょうか。
こういう認識を持つことが、どうやら歴史学の基本みたいです。

しかし、この認識を東方の世界観に持ちこむとおかしなことになってしまいます。
なにせ、東方世界には千年単位で生きている妖怪やら神やらがゴロゴロしています。
神話や歴史の当事者が、何食わぬ顔で生きている世界です。
彼女らは、「過去に起こった真実」を体験から知っているのです。
つまり、諏訪大戦」という歴史にとって、諏訪子の存在はジョーカーなんです。
今作の「本編」が歴史家の解釈によってつくられた「諏訪大戦の歴史」だと仮定すると、
諏訪子の楽曲である「ネイティブフェイス」がボーナストラックに置かれているのも
納得がいくんですよね。だってそれは歴史ではなく「真実」なわけですから。
曲名が設定されていないのも当然といえば当然。歴史の中で名前をつけるのは、
いつだって後世の人間なんですから。真実に表題などありません。

さて、ここまでわりと断定的に書いてますが実のところ合ってる自信はあまりないです。
とはいえ、この解釈でいくと他にも色々なことを説明できてしまいます。
たとえばジャケットの「かっこいい諏訪子」。
実物はあんな能天気な感じなのに、この絵はカリスマが溢れまくってますね。かっこいい。
ではこの補正っぷりを「歴史家の解釈」が入っているもの、と考えるとどうでしょう。
なんせ諏訪子は神様ですから、そのイメージどおりに描くとこういう姿になりそうな
気がします。ジャケの中に執拗なまでに描きこまれた諏訪大戦のモチーフも、
「歴史家視点」による過剰な装飾、とみることができるかもしれません。

ここまで音についてほとんど言及していませんが、音についてもおそらく同様。
今作のアレンジは、一風変わった民族楽器を多様し、古来の儀式や祭事の風景を
思わせるような「いかにも歴史っぽい」音作りがされています。
そしてこの「いかにも歴史っぽい」音と対照的に描かれているのが
例のボーナストラック。ゆったりしたピアノアレンジで、水のせせらく音なんかも
聴こえてくる。長閑でまったりとした楽曲です。
この対照的な両者を、前述した「歴史と真実」の関係に参照させてみると・・・
なんとも切ないというか、寂しいというか、そんな気分になります。

なんか、こうやって考えてると、歴史と二次創作って似てるなあーって思います。
どっちも「原典」があって、それを第三者が解釈して、世界が少し歪められる。
いつしかその歪んだ世界も他の誰かに共有されて、どんどん世界が広がっていく。
元の事象はひとつなのに、解釈によって色々な表情を見せてくれる・・・
いやはや、どこまで狙ってつくられてるんでしょうね。

fromadistanceの作品は、ひたすらテーマに沿う形でつくられています。
原作も、アレンジも、絵も、選曲も、全てがテーマに結びつく。
音楽作品ではあるけれど、音楽ですらも何かを伝えるためのツールに過ぎない、という
印象を受けます。実を言うと私、音楽だけでみると今作はあまり好きじゃないです。
凄い、とは思うけど、ストライクゾーンからはかなり外れてる。
それでもこの作品は大好きです。つまりはそういうことなんでしょう。
「創作物」として好意が持てる。それが私にとってのfromadistanceです。
コメント
 はじめまして! 友人に教えられて興味深く拝読しました。詳細なレビューありがとうございます。
 ここまで真面目に取り掛かってくれた方は他にいないのでは、と思うほどの文章で、恐縮です。
 御礼というのも変な話ですが、何点か補足させてください。

>ジャケット
 実は僕からジャケットイラストについて指示した部分はキャラクターと雰囲気くらいで、そう多くありません。
 あらかじめ用意した資料の一部を見てもらい、コンセプトについては簡単な説明をして、後はテーマに沿った形で、細かい部分は9時さんにお任せしています。
 当然、こちらで考えている正解に近いものは存在するのですが、あえてそこは指定していません。
 それでもこちらで考えていたもの+αを毎回意図も含めて出してもらえるので、ジャケットに関しては9時さんが凄い、というのが本当のところです。
 ビジュアル面での想像力は、やはりそっちの道の人にある程度お任せしたほうが、出来てくるものが面白いと感じます。
 もちろん、主旨を理解していないものだったら最初から作り直しになりますが、今のところそういうことはないです:-)

>神話や歴史の当事者
 "historie"の原曲がテーマになっているキャラクターの元ネタと、タイトルを見てもらうと分かりやすいかな……と思います。てゐの曲が二回入ってるのも意図的なものですし、かぐや姫(というか、竹取物語の原型ですが)が元々何だったのかを考えると、東方での配置はかなりねじくれています。
 東方はそうしたお遊びの整合性をあまり重視していない(それこそ二次創作的に)と見ているのですが、そういう部分への突っ込みも仕込んだつもりです。とはいえ説明していないので誰も気づいていないと思いますが……。

>音楽ですらも何かを伝えるためのツールに過ぎない、という印象を受けます。
 一応、音楽を作るために企画を作っているのですが、曖昧になってきていますX-D
 とはいえ、そう思っていただけるのはありがたい限りです。僕はオリジナルで作る際はほとんどモチーフを取らず、逆に二次創作では必ず原作に寄り添うことにしています。
 特に東方自体がキャラ、元ネタ、背景が豊富なので、コンセプト重視で作りやすいジャンルです。分かりにくいものへの需要も、多少なりあると信じています(笑)
 この次に作った"Duende"は、あまり分かりにくくても……と反省して、原作の設定だけではなく「ゲーム」をモチーフにしていたりします。

 長々と失礼しました! 本来こういうことも書かないほうがいいのかもしれませんが、ご容赦ください。もしよろしければ、これからも作ったものを見ていただけると嬉しいです。
2011/10/15(土) 22:38 | URL | spctrm #DyyL4kJI[ 編集]
>spctrmさん
すいませんすいません!このブログ普段コメントとか来ないので見落としておりました。
読んで頂けただけでもありがたいのに、こうしてコメントを頂けるとは嬉しい限りです。
この記事ですが、「考察もどき」などと逃げを打ってるように、
あまりレビューを書いたつもりはないんです。
与えられた解釈の余地から、二次創作のような楽しみ方ができればな~と
自分なりに考えて、「私はこう思うけど、みんなはどう?」と投げかけてみたつもりです。
なので、私にとっては正解は示されない方が嬉しかったりします。
とはいえ、ヒントを色々頂いたのでもう少し考えてみようとは思いますが・・・(笑)

それと、「Duende」についても色々考えを巡らせつつ聴いている最中です。
まとまったら懲りずにまた書こうかなーと思っています。
これからも細々と応援しています。読んでいただき本当にありがとうございました!
2011/10/20(木) 14:16 | URL | borozo #-[ 編集]
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