同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

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[感想] きみとぼくの区分線 / ロジカリズム

きみとぼくの区分線
(2011/10)
ロジカリズム

公式サイト

「ロジカリズム」は皆さまにパズルのピースを探して頂くような、そんなサイトです。
夢かもしれないし、謎かもしれないし、きみかもしれないし、ぼくかもしれません。
(ロジカリズム 「ロジカリズムについて」より)


この作品は弾き語りアルバムです。構成するものはピアノとボーカルしかありません。
音楽の最小単位、と言っても過言ではないほどにシンプルなそれは、
しかしその背景に「ロジカリズム」という、6年の歴史を持つ、ささやかなれど膨大な
個人創作サイトの存在を含んでいます。サイトを見てみれば分かりますが、
ロジカリズムには「ロジキャラ」なるたくさんのキャラクターがいて、
彼らは音楽や、漫画や、ゲームや、小説など様々な媒体のなかで表現されています。
今作「きみとぼくの区分線」はサイト内にあるいくつかの曲を抜粋して
音楽CDとしてまとめられたものです。あくまで本流は「ロジカリズム」であり、
今作はその支流のような位置づけと言えるでしょう。いくつもの「きみとぼく」を
めぐる楽曲は、サイト内にある小説やキャラクター、ないしは他の曲の情報を得て
初めて物語として成立するようになっています。楽曲を聴き込んだあとサイトを
めぐってニヤニヤするのも良し、サイトを一通りみたあと楽曲に触れてフムフムと
頷くのも良し、色々な楽しみ方ができる作品だと思います。

また「きみとぼくの区分線」、このタイトルがとても面白い。
実はロジカリズムにある弾き語り曲は、そのほぼすべてが「きみとぼく」ないしは
「わたしとあなた」のことをうたっており、各曲がどのキャラの物語であるかは
公式に明記されています。つまり各曲の「きみ」や「ぼく」や「わたし」や「あなた」は
それぞれ別人ですよ、とあらかじめ作者による「区分線」が引かれているわけです。
しかし、ロジカリズムのことを何も知らずいきなり今作を聴いた私は、
最初どれかの「きみ」や「ぼく」に同一人物がいるのかな、とか、
作り手や聴き手の関係をうたっているのかな、とかわりと的外れな妄想を
膨らませていたんです。1曲目の「嘘憑きガンスリンガー」と
2曲目の「ココロ侵略robot」は表裏一体になってるのかなーとか、
「きみが生まれた日」→「きみひとり」の曲順にどんな意味があるのかなー、とか。
実際はこれらは別個のキャラの別個の物語なんですけど、
なんとなーく繋がりを見出したくなるような何かがあったんですよね。
ここにある「きみ」や「ぼく」はそんなに明確に区分できるもんなのか?と。
で、サイト内の作品を一通り見て回ってみて、こう感じたことは必ずしも
的外れではないかな、と思い直しました。

たとえば「きみひとり」という曲。
この曲は小説「きみひとり」の主人公である西森蒼太の曲、とは書かれていますが、
ここに描かれている、世界からひとり取り残された「きみ」、それを見つめる「ぼく」の
どちらが西森蒼太なのかは明記されていないし、小説を読む限りではどちらを
蒼太と置いても違和感がないんですよね。さらに、どちらかを蒼太と仮定した場合、
相手方である「きみ」や「ぼく」が誰に当たるか、これも同作の登場人物である宮下緋色や、
村崎みずきなど色々な解釈ができてしまうんです。
「きみひとり」に出てくるキャラクターは、誰も彼も似た者同士なんですよね。
それぞれ別個の設定、姿形を持ちながら、根本はとても似通っている。
「きみ」と「ぼく」の区分線なんてものは、実のところすごく曖昧なものなんじゃないかと、
やはりそう思わずにはいられないんです。

「あおちゃんがいない世界なんて、誰もいないのとおんなじだよ」
(小説「きみひとり」7月7日(--) 59時22分(d)より)

みんなみんな、狂ってる。みんなが世界に、ひとりきり。
それに気づいた瞬間に、街から人は姿を消す。

(小説「きみひとり」7月7日(--) 59時22分(e)より)

「きみひとり」という小説は、ロジカリズムの中心にある作品です。
だからこそ、この「みんなが世界に、ひとりきり」という概念は、ひなた春花という
表現者がつくるものの根底なんじゃないか、という気がしています。
私が最初聴いた時に感じた「なんとなく繋がってそうな感じ」は
そういう根っこのところが引っかかったのかなあ、と今では思ってます。
弾き語り、という形式もまたどこか孤独を感じさせますよね。
ピアノと歌声、きみとぼく。両者は明確に分け隔てられたものではなく、
互いに共鳴し合うことで物語を形作る。ひなた春花さんの歌声は、
かわいらしい声だけどその歌はどこか不安げで寂しげで、聴き手のココロに忍び込み、
そのまわりに張り巡らされた「きみとぼくの区分線」を揺さぶってくるのです。

わたしはあなたのココロ侵略robot
割とミステリなんかも得意だけれど
あなたのココロにはウタが効くようです
だからわたしはウタを歌いましょう

(ココロ侵略robotより)

ロジカリズムというサイトにはミステリー小説があり、4コマ漫画があり、
サウンドノベルがあり、イメージイラストがあり、ボーカロイド楽曲があり、
弾き語り音楽があり、その活動範囲は今でも広がり続けています。
しかし広がれば広がるほど、その中心や根底にあるものは見えにくくなっていくものです。
オンラインで活動を広げ続けるロジカリズムが、今になってローカルでオフラインな
同人CDの製作を始めたのは、そうした根底にあるものの再確認、って狙いが
あるんじゃないかなーと思うんですよね。別個のキャラの別個の物語をひとつずつ拾い上げ、
余分なものを削ぎ落としたものに「きみとぼくの区分線」というタイトルをつけて、
ひとつの完結した作品として再構築する。結果として「ロジカリズムって何だろう?」
という根っこにあるものがはっきり浮き彫りになってる印象があります。
広がり続ける世界だからこそ、CDという形でいったん閉じておく、と。
ベスト盤なんかも近い作り方なのかもしれないけど、やっぱり音楽作品って表現は
おもしろいなーと改めて思い直した作品でした。

夢かもしれず、謎かもしれず、きみかもしれず、ぼくかもしれない。
昨年頒布された「キカイ仕掛けの謎刻」「きみとぼくの区分線」「窓と壁面のアコール」は
冒頭に引用した「ロジカリズムについて」にある4つテーマを扱ったものでした。
CD作品という形で一段落おいたロジカリズムは果たして今後どこを目指すのか。
オンラインの活動のほうにも今後できれば注目していきたいですね。
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