同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

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[毎日五月病] lamentのこと

lament
(2012/05)
毎日五月病

今年はサンホラ・少女病タイプのコテコテ物語音楽でいいものを作るサークルが次々と
現れた年だったけど、その中でもインパクトの強かった作品がこの『lament』です。
作風としては少女病に近く、バンドサウンドにストリングス、ピアノを交えた
比較的シンプルな構成からなるシンフォニックロック。今回が1stアルバムとのことだけど、
現時点で既にかなり洗練された音を出してると思います。ボーカルが悠花さんってことも
効いてるかもしれないけど、それぞれの音が非常に良いバランスで配置されてる。
特にストリングスは素晴らしい。3曲目のイントロとか、これまで後ろに配置されてた
弦がババーンと美旋律を纏って前に出てきて、聴く者を甘美な幻想に引き込んでくれる。
かと思えば6曲目の弦などは、まるでサイレンのような音をもって緊迫感を与えてくる。
ギターが、ピアノが、弦が「そこ」に配置されて、聴く者にどんな情景や心情をもたらすか、
そういうことをけっこう計算した上で作ってあるような印象があります。
複雑な構成や多彩な音色がなくとも、音をもって物語を伝える技術は相当なもの。

そういうわけで、音はかなりの優等生タイプな毎日五月病ですが、「五月病」の名は
伊達ではなく、描かれる物語はどうしようもなくやるせないものばかり。
1曲目の「日常デストラクション」からして「私」は死にたい死にたい言ってるし、
そっからどんどん幻想に溺れていき、逃げ込んだ幻想の中にも一切の救いは与えられない。
これだけ幻想を描くに適した音を出しておきながら、中身の物語は執拗に幻想の無力さを
訴えかける。アンチファンタジー。このアンバランスさがすごく魅力的なんですよ。
特に最後の曲「サバト」、これの悲惨さはもはや笑いがこみあげるレベル。
オチの部分だけ歌詞に書かれず、「ここで私の物語はおしまい。」とだけ書いてあるのが
非常にタチが悪い。この脱力感は明らかに狙ったものだし、どうしてこんな不毛な物語を
描く必要があったのか?と考えると、この作品の更なる面白さが見えてくると思います。

まあ、そっから先は作者の領分なので、あまり詮索しても「正解」を見つけることは
できません。ただ、想像して楽しむことはできる。毎日五月病について私が知るところと
いえば、「少女病のフォロワーであること」「少女病になりたくてもなれなかったから
サークル名を毎日五月病にした」くらいなもんで、しかも作者本人の発言を見たわけでも
ないからアレなんですけど、この材料だけでも色々と想像は浮かぶよね、と。
「美麗なシンフォニックロックから救いようのない物語」ってのはまさに少女病が
積み上げてきたフォーマットで、毎日五月病はそのフォーマットを利用してこの作品を
作り上げている。悪く言えば二番煎じなわけです。しかし、だからこそ・・・それを自覚
しているからこそ、彼らはこの作品に漂う「やるせなさ」を生み出せたとも言える。
「サバト」でああいう、下手すればギャグとも取れる脱力感をもって物語を終わらせている
こともたぶん同じで、あれはきっと彼らの渾身の自嘲なんだと思います。歪んでいて、
後ろ向きの創作意欲。けれど、この音は、この物語は、彼らの「オリジナル」である
少女病には決して生み出すことの出来ぬ幻想のカタチです。
やはりこれは毎日五月病という、オリジナルですよ。

さて、冒頭にも書きましたが今年は良い「物語音楽」を作るサークルが次々出現しました。
以前感想を書いた「のん's Factory」とか、まだ触れて無いけど「At the Garret」とか、
「三ツ星リストランテ」とか、「Leichia Carosello」とか。彼らに共通していることは、
同人音楽のフィールドの中に明確な「先人」が存在していて、そしてそれを自覚した上で、
自身の「オリジナル」を見つけようとしているところだと思います。時には先人への愛が
歪んだり怨念を纏ったり憎悪や嫉妬に変わったり自嘲することもあるかもしれませんが、
その感情こそが「オリジナル」の源なんですよね。毎日五月病はまさにソレだ。
まだまだ物語音楽には・・・物語と音楽のハーモニーには生み出せるものがある。
そう強く確信させてくれた作品のひとつがこの『lament』です。
作中で「私」の物語はどうしようもない終わりを迎えたけど、彼らの物語はきっとこれから。
これからも陰鬱でやるせなく、されど素敵な幻想を私たちに見せてくれることでしょう。
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