同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

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[感想] Ne;on×KEROchan☆ / KrasterII

Ne;on×KEROchan☆
(2013/05)
KrasterⅡ

公式サイト


東風谷早苗ちゃんの二次創作というと個人的には現実世界で異端扱いされて両親やら
同級生やらから迫害された過去みたいなのを描く暗~い話が好きでして、この作品も
その系列に入ります。過去話というよりはパラレルワールドで、神奈子諏訪子と出会わず
現実世界にずっと留まり続ける早苗が幻想郷ではっちゃけてる早苗の姿を夢見て
羨望と嫉妬にうち震える、みたいな話。早苗のこういう話自体はそう珍しいもんではないと
思うんですけど、同人音楽で、しかもアルバム一つまるごと使ってストーリー仕立てに
してあるのは初めて見ます。しかもこれ、Krasterの作品ですからね。
KrasterですよKraster。あの、聴いててウキウキしてくるようなあのきらびやかな曲調と
Ne;onさんの太陽のような歌声で早苗ちゃんの卑屈な感情がぶちまけられるのです。
この倒錯っぷりはハンパじゃない。今までKrasterが描いてきた「光」の背後に潜んでいた
「陰」がここへきて反旗を翻してきた感じ。『とある従者への追憶』あたりからそういう
コンセプトアルバムっぽいのを作ってる兆候はありましたが、ここまで思いきって
舵を切ってくるとは思いもよらなかった。こっそり名義が「KrasterII」に変わってるけど、
確かに彼らは変わったと思います。Aliesonと同じです。さあ境界線を踏み越えよう!


01-夢世界のドッペル
KrasterIIの門出となる1曲目、もうイントロのピアノからして素晴らしいですよね。
そっと優しく背中を押すような、か細くも力強いピアノポップな曲調とNe;onさんの歌声の
相性は抜群で、まさにKraster!って感じなのに歌詞だけが超後ろ向き。幻想に憧れ、羨望し、
嫉妬する早苗ちゃんの溢れんばかりの逃避衝動が何とも軽やかに歌われているわけです。
この曲調自体が早苗ちゃんを責めたてる「光」になっているように思えるんですよね。
「孤独って怪物が 餌を欲しがって 私を放すまいと拘束する」って歌詞にもあるように、
Krasterが照らす光はきっと彼女には眩しすぎるんでしょう。


02-飽くる朝のトートロジー
アンニュイな雰囲気のピアノバラードと思いきやサビでは振っ切れたような明るい曲調に。
ここのサビがすんごいKrasterっぽくていいメロディなんですよねー。いい曲なんですよ。
でもねえ、描かれてる内容はろくなもんじゃない。トリップしてるからね。トリップ。
旅立とう、って行ってますけどアナタどこの世界に旅立つ気ですか、と。
この曲単体だとポジティブにも捉えられますけど最後まで聴いたらもうだめですね。
「真っ暗な狭い部屋の中 誰もいない部屋の中」とかすんげー嫌らしい伏線だ。


03-諦観エゴイズム
デッデッデデー!(絶望)
異様に耳に残るイントロのシンセリフと珍しく吐き捨てるようにパンキッシュに歌うNe;onさん!
紛れも無く今作のキラーチューンであり新生Krasterを象徴する1曲であること間違いなし。
なんつーかこの曲はほんと今の自分にしっくり来ますね。猛烈な勢いで並べ立てられる
「諦め」の文句にいちいち共感できてしまう。自分の気持ちを代弁してくれてるみたいで
聴いててめちゃめちゃ爽快感あるし何度でも聴き返してしまいます。
世界を呪いまくった挙句、一番屑なのは自分自身ですよねーという卑屈な自覚が気持ちいい。
今年の同人音楽で一番聴いてる曲ですね。こういう曲を待ってた。ほんと大好き。

物語としての位置付けはたぶん早苗の内心の吐露ってとこでしょう。
冒頭で「現実世界で異端扱いされる早苗が好き」みたいなこと書きましたけど、
今作に関しては早苗はただの凡人で自身が凡人であることを自覚してしまった人の末路って
印象があります。たぶん自分がこの歌に共感してしまったからだと思いますが、
だからこそ早苗ちゃんに愛着湧いてきたし作品にも愛着が湧くというものです。

「分かってるわ もう諦めてるから だからそんなに五月蝿くしないでよ
 分かってるわ 諦めるしかないって だから邪魔するなって言ってるでしょう」
ここの歌詞ほんっっと良いよなあ。Ne;onさんの歌い方も最高。


04-トモシビ
激しい曲調から一転、穏やかなピアノバラードに。わりかし地味な曲ですがメロディが良いし、
何よりストーリーの解釈上では一番重要な曲だったりします。この曲は分岐点なんですよね。
早苗が神奈子諏訪子と出会ったか、出会わなかったか。
「飽くる朝のトートロジー」では「真っ暗な狭い部屋の中 誰もいない部屋の中」でしたが、
「トモシビ」では「真っ暗な狭い部屋の中に 貴方の光が灯るの」となり、ここで世界が
分岐しているわけです。で、この分岐をどういうシチュエーションと捉えるかが今作の
一番面白い考察ポイントです。自分は次のAかBどっちかかなーと考えてます。

解釈A:パラレルワールド
エロゲの選択肢みたいな感じで、「トートロジー」→「エゴイズム」の分岐とは
完全に独立した分岐世界と捉える考え方。「トモシビ」で神様たちと出会った早苗は
幻想郷で幸福な日常を送りました。メデタシメデタシ。
これだと「トモシビ」の早苗は綺麗にハッピーエンドを迎えます。でも、「エゴイズム」までの
早苗は完全にほったらかしです。鏡の中の幸福を与えられるだけです。

解釈B:早苗の妄想
「トモシビ」は「エゴイズム」までの早苗が生み出した妄想である、という考え方。
つまりトモシビ以降の幸せな早苗ちゃんは全て脳内お花畑でしたーということであり、
A以上にどうしようもない解釈ですが、これはこれで早苗ちゃんは救われているとも言えます。
当人が幸せならば、たとえそれがただの逃避であっても救済たりえるのですよ。
個人的にはAよりもこちらの解釈の方が好きだし、「諦観エゴイズム」のラスト
「私は何のため 生まれてきたの 答えてみなさい そうじゃなきゃこのまま
 利己主義な偶像に 魅入られ蝕まれていく」
こことも綺麗に繋がるんですよね。「トモシビ」で描かれる出会いが実は
「偶像に魅入られ蝕まれていく」早苗の姿だった、と。

とまあ、こんな感じでどちらにしろ早苗にはまともなハッピーエンドは与えられません。
だけど自分はBのほうが好きなので、今後の曲はBの解釈に沿って捉えることにします。


05-Q.E.D.
Q.E.D.とは言わずと知れた証明終了ですが、早苗ちゃんは何を証明しているのか。
上のような解釈でいくなら答えは簡単。神の存在証明です。
神様は幻じゃありません!神様はここにいます!いるんです!
妄想に耽溺することで自分を正当化する早苗ちゃん、実に幸せそうですね。
曲のほうも実にKrasterらしいウキウキポップで幸せを全面援護!

『明日の朝までに 期待を込めてこう言うんだ 「ただいま、そして、おかえりなさい」』
この台詞カギカッコがひとつしかないよ早苗ちゃん!


06-ハイギミックデイズ
これも真正面からKrasterって感じのすんげーいい曲ですよね。
この曲だけは諏訪子視点で書かれているようですが、たぶんその諏訪子は早苗がつくった
幻なのでやっぱり早苗視点の一種なのかもしれません。「もしも世界が幻だったら」とか
「もしも私が幻だったら」とか自覚しながらも明るく前向きに進もうとするさまが描かれますが、
そもそも前向きってどっち向きなんでしょうね。彼女にとってはどれが現実なんでしょうね。


07-It's MO★RI★YA WORLD
フィナーレを飾るのは電波曲でした。Krasterの作品全部持ってるわけじゃないからあれだけど
こういう曲って実は初なのでは?守矢一家の騒がしくも温かな日常が描かれていますが
歌詞のところどころに後ろ暗いものが見え隠れしているし、うりゃおいうりゃおいの掛け声が
空元気にしか見えないのがすごい。
「ステージの裏側の 本当の動機なんて
 考えるだけ無駄じゃない? そんなの誰にも分からない」

いやー、耳が痛いですね。めっちゃ裏側暴こうとしててスイマセンスイマセン。
でもこれはホントそのとおりで、自分はこういう「当人だけのハッピーエンド」ってのが
大好きなんですよね。たとえその先に空虚しかなくても、物語はこれで終わりなんですから。
好きな場所で終わらせられるのがフィクションの特権ですよ。


◆まとめ
まあこんな感じで、久しぶりにどっぷりハマれた東方アレンジ作品でした。
今作の公式のテーマは「守矢一家の光と陰」なんですが、この「光と陰」の描き方には
ちょっと驚かされましたね。これは「光」これは「陰」って分割して描くんじゃなくて、
「光と陰」が裏表隣り合わせに描かれている。光あるところに陰あり、というか。
特に後半の「Q.E.D.」と「ハイギミックデイズ」が顕著で、この3曲は曲調としては
今までのKrasterやNe;onさんのイメージそのまんまって感じの明るい曲なんですが、
前半の3曲で描かれた内容を照らしてみるとそこに「陰」が浮かび上がるわけです。
ちょうどアルバムの中心で境界線のように現実と幻想を区分する「トモシビ」といい、
この作品には優れた音楽アルバム特有の構造美みたいなものがあるんですよね。
正直言ってKrasterがこんなもん作ってくるとはまったく考えてなくて、
最初は「諦観エゴイズムかっけー」としか思ってなかったんですけど、よーく歌詞を
読んでいくとウオオオってなったので凋叶棕とか回路とかああいうのが好きな
めんどくさい皆さんは是非じっくり聴いてみてください。

つーわけでまずは諦観エゴイズム聴いて「かっけー」って思うところから始めよう!
デッデッデデー!



※ところでこの公式PV初めて見たんですけど、えらく神奈子にフォーカス当たってますね。
この曲が早苗の内心って解釈を変える気はないですが、その心を神奈子が代弁している、
って解釈はアリかなー。作中に描かれている早苗ってこんな感じに感情をぶちまけることが
できるタイプではないから、神奈子という存在を生み出して彼女に世界を「呪わせた」とかね。
そうすると「諦観エゴイズム」には神奈子自身のそういう悲哀も含まれているんじゃないか・・・
とかまだまだ妄想を膨らませる余地はありそうです。誰か綺麗にまとめてください><
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