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同人音楽の感想みたいなレビューみたいなものを書いてます

【感想】 Che cosa fai in vacanza / liqueurprime

Che cosa fai in vacanza
(2019/04)
liqueurprime

公式サイト


ここ2年くらい、同人音楽をまったく聴いていませんでした。
興味の対象が他に移って、なんとなく聴かなくなっちゃったんですよね。
このままフェードアウトかなと思ってましたが、今回の春M3が自分の観測範囲で盛り上がっていて、
ちょっと羨ましくなったので先日メロンブックスで見つけてきたのがこの作品です。

ジャンルは女性ボーカルのポップスで、試聴したときにまずピンときたのは
「この歌声!ななひらさん!ななひらさんに似てる!」という点でした。
鼻声がかったロリ系の声質が似ているのもそうなんですが、それ以上に歌い方が似ています。
歌に対するひたむきさ、とも言いますか。それぞれの楽曲にしっかりと向き合って、
大袈裟な言い方をすれば「音楽に命を吹き込んでいる」とも思える歌い方。
ロリ・電波系ボーカルでそれができるのはななひらさんくらいだと思っていましたが、
今作のボーカル、もちこまめさんにも確かに通じるものを感じたのです。

それもそのはずで、彼女はボーカルであるとともに、作品のプロデュースも行っています。
過去作の情報を見ても、作詞・作曲・デザイン等は外注のため毎回異なりますが、
ボーカルと企画は必ずもちこまめさんが担当しています。
ボーカル=企画である場合、基本的には「歌いたいものを作る」という方向性になるはずで、
そのためか彼女の歌からは「この曲はこういう風に歌いたい!」という強い熱を感じます。

歌の上手さとか技術とかは私はよく知りません。
しかし熱というのは知識などなくても肌で、感覚で伝わります。
そして同人音楽とは、作品を通してもっとも近い距離でその熱を受け取ることができる場の一つであり、
受け取ったからこそ私はいまここで3年ぶりに感想を書いています。


◆コンセプトについて

タイトルのChe cosa fai in vacanza(あなたは休日をどう過ごしますか)が示すとおり、
今作は「休日をひとりで過ごす女の子」をテーマとしています。

-甘酸っぱくていじらしくて、だけどちょっぴり憂鬱で、それでもきっととびっきりな休日がくるの。-

特設サイトのテキストの引用ですが、まさにこのとおりの内容ですね。
女の子ならではの色々な感情が描かれ、それらを「休日の過ごし方」という枠の中で表現している。
この枠の設定が絶妙だなーって思うんです。聴く側にも作る側にも丁度いい自由度というか。
作詞作曲も全部外注なので、あんまり設定ガチガチだと調整が大変だろうし、
かといって曖昧すぎると統一感を損ねてしまうおそれがある。
特設サイトとかCDの帯裏なんかにひっそり書いてあるフレーバーテキストくらいの情報が
イメージとしてちょうどよくて、作品の形態といい感じに噛み合ってるんですよね。


◆曲・詞・歌について

全5曲、収録時間20分程度のコンパクトな作品で、曲調は打ち込みによるガールズポップ。
作曲者は曲ごとに異なりますが、どの曲もいかにも女の子って感じの甘くてふわっとした
曲調に統一されています。おおむね、コンセプトから想像される内容どおりでしょう。
やや変化に乏しいきらいもありますが、主役はあくまでもちこまめさんのボーカルですからね。
歌い回しで十分に変化をつけているので、バランスは取れています。

アルバム構成としては、1曲目で作品全体の概要を示し、2~5曲目で各々の休日を描くというもの。
進行に従って段々と明るく、前向きになっていく構成が素晴らしいですね。
同居人が去り、広くなった部屋でひとりお茶をしながら気持ちの整理をする2曲目から始まり、
幼馴染の男の子に対する。悶々とした思いを抱えて落ち着かない週末を過ごす3曲目、
漠然とした憂鬱や不安を振り払うように、努めて明るくあろうと外に繰り出す4曲目、
ひたすら元気で前向きな5曲目と、順番どおりに聴くことで元気が湧いてくるような構成。
連休終わりの沈んだ気分もこれを聴けば少しは晴れる……かも?

そしてもちこまめさんのボーカル。上のほうにも書きましたが、彼女の歌には「ひたむきさ」を
強く感じるんですよね。今作は1曲1曲、女の子の繊細な感情が描かれており、それを歌の中で
いかに表現するかが大事なんですが、ちょっとオーバーなくらいに歌い方を変化させています。
1曲目はフラットに、2曲目はちょっと儚くアンニュイな感じに、3曲目は慌ただしく揺れを大きく、
4曲目は気持ちを抑えつつもサビで溢れさせるように、5曲目は底抜けに明るく元気に……とね。
それでいて声質が私の大好きな鼻声気味ロリ系ボイスというね。最高としか言うほかない。
万人に好まれる、ということは無いと思いますが、刺さる人にはぶっ刺さるはず。


◆各曲感想

01-私だけのWeekend
雑踏の中にもひとりひとりに物語があり、それぞれの休日を過ごしている……という導入です。
曲としては作中でもっとも主張控えめですが、こういう曲があると後の曲に対する
イメージが湧きやすくなりますね。

02-Piece of the world
同居人がいなくなった、欠けた世界でひとりティータイムを過ごして気持ちを整理するお話。
Piece of the worldというタイトルがハイセンスですよね。彼女にとって、同居人がいた部屋こそが
世界だった、という。喪失感に少し目をそらしつつ、時間をかけてゆっくり受け入れていく、
そういう複雑な感情が、溜息のような歌声によってふわっと紡がれていくのが心地よい。

03-Rocky☆Start
Mamyukka等でお馴染みのオッカさんが作曲。オッカさんらしい飛び跳ねるようなメロディが
「ちょっと気になっていた男の子から別の子に対する恋愛相談を受けて自分の恋心に気づいて
ジタバタしたりヤケクソショッピングに繰り出したりする」この曲にピッタリ嵌ってますね。
ボーカルもそれに呼応するように揺れや起伏を大袈裟なくらい強くしているのでドタバタ感が凄い。
ヒロインの子には悪いですが聴いてて大変微笑ましく、楽しい曲ですね。

04-ShinyHoliday
今作で一番の曲だと思います。前向きな曲ではなくて「前向きであろうとする曲」なのが良い。
嫌な気分を抱えつつも家を飛び出してあちこち散策して振り払おうというヒロインの気持ち、
それを汲んであえて抑え目に歌うボーカル、それらを開放するような素朴で綺麗なサビメロと、
三位一体でピッタリです。ラストのサビは夕暮れのシーンなんですが、ここの転調が一層素晴らしい。
休日が終わり日が暮れたけど、代わりに心は晴れている……その軽くなった気持ちを、
転調で表現しているんですよね。ラスサビで転調する曲じたい私は大好きなんですけど、
こんな素敵な含意まで示されちゃあ……そりゃあもう最高としか言うほかない。

05-Ready Go Round
これまでの曲にあったモヤッとした感情を吹き飛ばすようなひたすら明るく元気な曲。
サビの4つ打ちリズムの心地よさと、途中の元気一杯なラップパートがお気に入りです。
最後にこういうシンプルに明るい曲をもってくることで、
「それでもきっととびっきりな休日がくるの」というテーマに繋がるのが良いですね、


◆まとめ

久しぶりに新しく購入した同人音楽作品で、これほどの作品に出会えたのは僥倖でした。
ここ数年は商用のゲームや音楽によく触れていましたが、やはり同人音楽ならではの
作品というのは同人音楽でなければなかなか出会えないのだなと再認識しましたね。
余計な中間項を考えなくていいので、作品そのものと真っ向から向き合える、
その楽しさ、純度の高さは他ではなかなか味わえません。
今作はとにかくボーカルが最大級に自分好みであり、その補正が強くかかっているので
この感想にあんまり客観性はないと思います。
とはいえ、コンセプトの面でも十分練られているのは間違いなく、また過去作でも
今作とは大きく異なる雰囲気のものもあり、しばらくはこのサークルに注目していきたいですね。
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